団塊の世代が一斉に後期高齢者となる2030年前後、医療・介護の需要(高齢者人口の増加による慢性疾患・複数薬剤の管理が必要な患者が増加し、病院だけでは支えきれなくなる患者を薬局が地域で健康管理を担っていく)が急増する「2030年問題」が迫ってきています。そしてそれは薬局の役割が大きく変わる転換期です。
薬局は高齢患者の急増、多剤併用への対応、そして在宅業務、医師や介護との連携など地域包括ケアの役割がこれまで以上に求められることとなり、それに対応して生き残っていかなければなりません。
しかし近年の物価高、薬価差益の縮小、医薬品仕入れ価格の上昇、薬剤師の賃上げ、生産年齢人口の減少による人材確保問題など課題は山積みです。業務の効率化、生産性の向上などに対する1つの手段が、政府の推進する「医療DX」です。「2030年」は単なる目標年ではなく、国のプロジェクトの最終的な到達目標(ゴール)となる重要なマイルストーンです。
これまで薬局経営は、自店舗内の閉じたシステムを中心に行われてきました。現在、電子処方箋管理システムなどにより「バラバラに管理されている医療情報」が「全国どこでも共有・活用できる状態」への移行段階です。
現状では多くの医療機関でシステム規格が異なり、外部との接続が困難です。その状況を「全国医療情報プラットフォーム」を通じて、個人の診療記録、アレルギー情報、処方内容などが、全国の医療機関や薬局で共有可能とします。薬局がすべてを閲覧できるようになるのかについては不明ですが、薬局は「処方箋」という限定的な情報だけでなく、共有された医療情報を基に服薬指導を行う体制へと変化します。
現在は多くの医療機関で採用されているオンプレミス型(院内サーバー型)システムは、更新周期が通常5〜7年であり、更新には多大なコストが発生します。政府はこれについても高コストで連携が困難なオンプレミス型から、標準規格に準拠した安価な「クラウド・ネイティブ型(インターネット経由で利用する標準的なシステム)」への乗り換えを推奨しています。これによりコストを抑えつつ全国連携に対応することが可能になります。
さらに「コード統一」が進められていきます。医薬品コードが統一され、物流や臨床現場でバラバラだったコードを紐付ける公的なデータベースが、2028年度(令和10年度)を目処に稼働します。これにより、医薬品の追跡や在庫管理の効率化が実現します。
検査値の標準化も進められ、臨床検査コードについても2030年を見据えて標準規格(JLAC11)への統一化がなされていきます。
「2030年」は少子高齢化による人手不足のさらなる深刻化も薬局経営に大きな問題となります。
これに対応するにも医療DXはなくてはならないものです。自動化やAI活用によって、少ない人数で質の高いケアを提供する「生産性向上」の実現が、2030年までの必須課題です。
薬局視点での2030年の医療DX完成は以下のようになります。
各医療機関・薬局が「独自の方言(異なるシステムやコード)」で話しており、意思疎通(データ連携)が困難であったものが、2030年には、全国すべての施設が「標準語(標準型電子カルテ・クラウド)」を話し、専用回線でつながり、どこに行ってもスムーズに情報を利用することが可能となります。そしてそのことが薬局の生産性向上に繋がることとなります。
この「標準語」の世界に対応できるよう、2030年を見据えたシステム投資と業務フローの再構築(自動化・対人業務へのシフト)を進めていきましょう。