WEB会報

カテゴリー

vol.280 2026年3月号

吸入手技の確認から始まった在宅

委員長 辻本 正浩

「この患者さん、本当にちゃんと吸入できているのだろうか?」

そう感じたことは、どなたも一度はあるでしょう。しかし、アドヒアランスが疑わしい外来患者さんに確認しても、多くの方は「できている」とおっしゃいます。私が担当している在宅患者さんも、以前はそうでした。

その方は重度の呼吸器疾患を患い、内服薬のほかにコントローラー2剤、リリーバー1剤が処方されていました。薬歴には「体調安定。家族の見守りで吸入・うがいも励行」とあり、私もそれを鵜呑みにしていました。ところが、ある日、在宅移行のきっかけとなる事件?が起こります。

30日分の定期薬をお渡ししたわずか数日後、ご家族が「コントローラーが足りなくなった」と自費の処方箋を持って来られたのです。「調子が悪くて回数が増えた」「長年使っているから本人が一番わかっている」との説明でしたが、実際にはご家族が服薬にほとんど関与できていないことが判明しました。これは看過できないと考え、意を決してご自宅を訪問させていただくことにしました。

案の定、そこには残薬の山。いつのものか分からない汚れた一包化薬、使いかけのコントローラー、そして山積みの使用済みリリーバー。デバイスのカウンターからまだ使えるものも散見されました。

ちょうどpMDIのリリーバーを使用されるタイミングでしたが、その手技を見て愕然としました。

1回2吸入(1日4回まで)の指示に対し、口を開けてボンベを「ポン、ポン」と素早く2回押しただけで終了。「効かないから一日に何度も使う」とおっしゃるのも無理はありません。

すべての吸入薬について、手技を一から説明し直しました。また、良かれと思って装着していた補助器具が、かえって操作の理解を妨げていることも判明。ご本人の握力でも十分に押せることが確認できたため、器具は取り外しました。さらに内服薬も、生活スタイルに合わせて1日1回で済む処方への変更を医師に提案。快諾いただくと同時に、正式に在宅訪問による管理依頼を受けることとなりました。

ちょっとした違和感からの介入が、在宅医療へとつながるケースもあります。ちなみにこの患者さん、その後アドヒアランスが劇的に改善し、今は大変お元気にお過ごしです。

2026年3月号の一覧へ戻る

印刷準備中です。しばらくお待ちください...

※時間がかかる場合は「キャンセル」して、
「Ctrl」+「P」で印刷してください。