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vol.280 2026年3月号

薬局プレアボイド@おかやま(2025年10〜12月報告分)

委員長 田坂 祐一
副委員長 立野 朋志

平素よりプレアボイド報告事業へご理解ご協力をいただきありがとうございます。2025年10〜12月分のプレアボイド報告として、145施設より延べ318件の報告をいただきました。業務等でご多忙の中、ご報告いただき誠にありがとうございます。報告いただいたプレアボイド事例の中から分類毎にいくつかの事例を紹介します。ご確認いただき、日々の業務等にお役立ていただけますと幸いです。

薬歴確認や患者情報の聴取が禁忌薬の投与回避に繋がった事例

薬歴確認による禁忌薬の投与回避

S・M®配合散が処方された患者。薬歴から、患者は甲状腺機能低下症であることが確認された。S・M®配合散は血中カルシウム濃度の上昇により病態に悪影響を及ぼすおそれがあるため甲状腺機能低下症には禁忌であり、疑義照会したところ、S・M®配合散は削除された。

患者症状の確認による禁忌薬の投与回避

ビレーズトリ®エアロスフィア(ステロイド・抗コリン薬・b2刺激薬)が処方された患者。投薬時に、経尿道的前立腺切除術後も症状が改善せず、尿の出にくさを感じている旨を聴取した。呼吸器科の処方医に、禁忌である「前立腺肥大等による排尿障害がある患者」に相当することを情報提供し、ビレーズトリ®はフルティフォーム®125エアゾール(ステロイド・b2刺激薬)に変更となった。

患者病態の変化に伴い禁忌薬に該当した定期薬の変更提案

A病院とB病院からの処方箋を同時に持参した患者。今回、A病院より糖尿病に対してジャディアンス®錠10 mg(エンパグリフロジン)が新規処方された。B病院からは糖尿病に禁忌であるクエチエピン錠が継続処方されていたため、B病院の処方医に疑義照会したところ、クエチアピン錠は糖尿病患者でも使用可能なヒルナミン®錠(レボメプロマジンマレイン酸塩)に変更となった。

服薬後のフォローアップ実施により副作用発現に気付き対応できた事例

メトトレキサートカプセルによる肺障害の疑い

メトトレキサートカプセル(6 mg/日、週1回)が開始となった患者。35日後に電話にてフォローアップを実施したところ、咳嗽を認める旨を聴取し、メトトレキサートによる肺障害の可能性を疑った。この旨を処方医に報告し、再受診後にメトトレキサートカプセルは中止となった。

検査値に基づく疑義照会により処方が変更となった事例

PT-INRに基づくワーファリン®錠の投与量調節の提案

ワーファリン®錠(ワルファリンカリウム)が2.5 mg/日で処方された患者。検査結果を確認したところ、PT-INRが3.1と通常よりも高値となっていた。患者に医師から説明を受けたか確認したが不明であったため、疑義照会したところ、ワーファリン®錠は2.25 mg/日に減量となった。

ザイティガ®錠服用中の低カリウム血症に対する継続的なフォローアップ

ザイティガ®錠(アビラテロン酢酸エステル)を服用中の患者。血清カリウム値が2.8 mEq/LとGrade 3の低下を認めたため処方医に確認したが、その時点では経過観察と判断された。しかし、4ヶ月後に血清カリウム値が2.6 mEq/Lに低下したため改めて疑義照会したところ、アスパラカリウム錠600 mg/日が追加された。翌月、血清カリウム値は3.2 mEq/Lに上昇し、さらにアスパラカリウム錠が900 mg/日に増量され、その1ヶ月後には血清カリウム値は3.7 mEq/Lと基準範囲内になった。また、血清カリウム値の上昇に伴い、不整脈もみられなくなり、頓用のベラパミル塩酸塩錠を服用することもなくなった。

  • 添付文書の重要な基本的注意には、ザイティガ®錠投与中は定期的に血液検査を行い、必要に応じてカリウムの補給を行う旨が記載されている。

薬歴管理により切り替え時の適切な投与間隔の確保に繋がった事例

アジレクト®錠からエクフィナ®錠への切り替え

エクフィナ®錠(サフィナミドメシル酸塩)が新規処方された患者、アジレクト®錠(ラサギリンメシル酸塩)から切り替えであったが、休薬期間がなかった。高血圧クリーゼ及びセロトニン症候群等の重篤な副作用発現のおそれがあるため、両剤は少なくとも14日間の間隔を置く必要があるため疑義照会したところ、エクフィナ®錠は削除され、2週間後に再受診することとなった。

エンレスト®錠からACE阻害薬(エナラプリル錠)への切り替え

エナラプリル錠が新規処方された患者、エンレスト®錠(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)からの切り替えであったが、休薬期間がなかった。血管性浮腫があらわれるおそれがあるため、両剤は少なくとも36時間の間隔を置く必要があるため疑義照会し、エナラプリル錠は翌々日から開始するよう変更となり、一包化調剤後に服薬指導を実施した。

患者症状やマイナポータルでの薬歴確認が処方間違いの回避に繋がった事例

薬剤投与時の患者症状の確認を踏まえた名称類似薬に関する疑義照会

桔梗湯エキス顆粒(138番)が処方された患者。薬剤交付時に患者症状を確認するも桔梗湯の適応に該当する症状はなく、手指の冷えがある旨を聴取した。患者症状から、桔梗湯エキス顆粒(138番)は当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス顆粒(38番)の間違いである可能性を考慮し、疑義照会したところ、桔梗湯エキス顆粒(138番)は当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス顆粒(38番)に変更となった。

  • 桔梗湯(138番):通常、扁桃炎、扁桃周囲炎により咽喉がはれて痛む人に使用
  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38番):通常、手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢又は下腹部が痛くなりやすい人のしもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛の治療に使用

他薬局での調剤歴等の確認を踏まえた名称類似薬に関する疑義照会

ニフェジピンCR錠20 mgで加療されていた患者。今回、ニフェジピンCR錠ではなく、ニカルジピン塩酸塩錠20 mgが新規に処方されたが、患者からはこれまでと変更ない旨を聴取した。前回来局以降、他薬局での調剤や入院歴もあったことから、処方変更の有無を含め確認が必要と判断した。マイナポータルで薬剤情報を参照したところ、継続してニフェジピンCR錠の処方歴が確認できたため疑義照会したところ、ニカルジピン塩酸塩錠はニフェジピンCR錠に変更となった。

服薬方法の確認を踏まえた疑義照会が適切な薬剤投与に繋がった事例

小児における徐放性を考慮した粉砕投与可否の判断

インチュニブ®錠(グアンファシン塩酸塩)が新規開始となった患児、母親が粉薬を希望され、医師からインチュニブ®錠の粉砕指示があった。インチュニブ®錠は徐放性製剤であるため、母親に事情を確認し、錠剤も服薬ゼリーなどを使用すると上手く服用できる旨を聴取したため疑義照会し、粉砕指示は中止し、錠剤のままで服用することになった。その後、フォローアップを実施し、錠剤で服用できていること、副作用の発現がないことを確認し、医師へもその旨を報告した。


PICK UP事例 No.1

経鼻胃管の通過性を考慮した粉砕投与可否の判断が適切な薬剤投与に繋がった事例

経鼻胃管(NGチューブ)より薬剤投与中の患者。ラスビック®錠75 mg(ラスクフロキサシン塩酸塩)を粉砕し、NGチューブから投与するよう指示があった。投与可否を確認するためインタビューフォームを参照したところ、「12 Fr 120 cmでは通過可能、水(約55℃)20 mLで1回洗浄が必要」「8 Fr 120 cmでは水懸濁液が詰まり(ゲル状)通過しない」旨の記載があった。チューブ経によっては閉塞のリスクがあるため、これらの情報を踏まえて処方医へ疑義照会し、代替案を含めて協議した結果、ラスビック®錠はアジスロマイシン錠250 mgへ変更となった。

解説

在宅医療の拡大により、医療機関外でも経管投与の判断が求められる場面が増えています。在宅医療患者数は2013年から2023年の10年間で約2倍となり、100万人を超えています1。今後も増加が予想されており、薬局薬剤師が経管投与可否の確認を行う場面も増えてくると考えられます。

経管チューブからの薬剤投与可否を判断するためには、カテーテルの太さを示す規格であるFr(フレンチ)を理解しておくことが重要です。Frは主に外径の指標で、1 Fr=0.33 mmと定義され、8 Frは外径約2.7 mmに相当します。成人でも疼痛・違和感の軽減を目的に8〜10 Frの細径が用いられることがあります²。一方、細径ほど内腔が小さく、チューブが長い場合や薬剤投与を行う場合に閉塞リスクが高まることが指摘されています。また、閉塞リスクに直結するのは「内腔」であり、材質・構造によって内腔径は変わり得るため、同じFrでも通過性が一定とは限らないことにも留意が必要です。薬剤を粉砕・懸濁して投与する場合でも、製剤の特性(粘稠化・ゲル化、賦形剤やコーティング等)により通過性は大きく異なります。したがって、インタビューフォームや経管投与に関する書籍等を参照し、薬剤ごと・チューブ径ごとに投与可否を評価する必要があります。

本事例では、NGチューブ留置下でラスビック®錠を粉砕して経管投与する指示がありました。しかし、ラスビック®錠のインタビューフォームには、錠剤を破砕して水に懸濁した場合の経管通過性に関する検討が示されており、一定の条件(例:8Fr・120cm)では「水懸濁液が詰まり(ゲル状)通過しない」と明記されています。そのため、本剤を粉砕して投与することは投与不能や閉塞につながり得るため、事前にリスク評価を行う意義が大きいといえます。実際に本事例では、インタビューフォーム記載を根拠に疑義照会を行い、代替案を含めて協議した結果、アジスロマイシン錠へ処方変更となり、閉塞リスクの高い投与を回避できました。

経管投与に伴うチューブ閉塞は、チューブの入れ替えや再挿入が必要となる場合、疼痛や強い不快感など患者負担につながり得ます。したがって、徐放性・腸溶性の有無だけで判断せず、チューブ径(Fr)・長さ等の条件と製剤特性(懸濁時の粘稠化・ゲル化など)を確認し、投与可否を評価することが重要です。

1レファレンス(国立国会図書館 調査及び立法考査局). 2024;888:25–50.
2日本静脈経腸栄養学会雑誌. 2007;22(4):515–516.

(事例は添付文書等の記載に基づき、一部編集して掲載しています)


報告時の注意点

プレアボイドとは、薬学的介入により患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例が該当します。「医師へ報告した」「医師へ検討を依頼した」のみで処方変更や検査の追加、副作用の軽減などがない事例はプレアボイドには該当しませんのでご注意ください。プレアボイド報告入力時には、疑義照会・処方提案・服薬指導等により、どのようなアウトカムが得られたか(どのような不利益を回避・軽減したか)を意識して記載いただきますようお願いいたします。岡山県薬剤師会会報2020年3月号p.9「プレアボイド報告フローチャート」もご参考ください。

本委員会では、以下を目的として、皆様からご報告いただきました情報を共有させていただきます。

  • 未だ確立されていない薬局プレアボイドを標準化(定義化)すること
  • 分析・収集した情報を地域へ還元し、薬局と病院・診療所間の連携を促進すること
  • 薬局と病院・診療所間で情報共有できるシステムを構築・運用し、地域において安定的に情報収集・分析・共有ができる仕組みを確立すること
  • 地域(支部)の活動において、プレアボイド事例が薬薬連携の充実のための重要なファクターとして認知され、薬剤師職能向上のために活用されるようにすること
  • 薬局薬剤師が普段から行っている薬剤師業務を見える化し、薬剤師職能を国へアピールし、薬剤師職能が認められるようにすること

引き続き継続的なプレアボイド報告をお願いいたします。

安全管理特別委員会ではプレアボイドの実践とプレアボイド報告入力 に関する支部研修会を開催しています!

  • プレアボイドは聞いたことがあるけどよく分からない
  • プレアボイド報告に興味はあるけど、忙しくてなかなか一歩を踏み出せない
  • Pharma-PROsは知っているけど使い方がよく分からない

そんな方にオススメの分かりやすい入門編の研修会になっています。お気軽に岡山県薬剤師会事務局までお問い合わせください!

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