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vol.274 2025年3月号

令和6年度 第2回岡山県学校薬剤師セミナー

岡山県学校薬剤師 理事 常國 紘平

第2回岡山県学校薬剤師セミナーの報告をさせていただきます。今回は横浜薬科大学レギュラトリーサイエンス研究室の田口真穂先生をお招きして「近年の薬物乱用防止教室の進め方」についてご講演をいただきました。

はじめに我が国における薬物乱用の状況についての話では、この10年間で覚醒剤の検挙数は減少傾向にある一方、大麻の検挙数は増加し、令和5年には覚醒剤を上回り最も多くなったと説明されました。大麻の種類も多くなり、葉だけではなくリキッドタイプのものも多く見た目が電子タバコのフレーバーと似ており、区別が難しい。THC・THC類似化合物商品も多くグミタイプ・チョコレートのようなものも出回っており安価でネットで簡単に買えてしまうのが現状とのことでした。

類似化合物を取り締まるため、令和6年1月から『物質群として包括指定』が始まりました。しかし、依然として十分な規制とは言えず、数年前の危険ドラッグに対する包括規制と似た状況にあります。

大麻はタバコより「害」はないの?の質問については、大麻は脳の神経細胞の回路をカットしてしまい神経線維が破壊されてしまいます。そういう意味でもタバコより害は深刻です。大麻を乱用したときの影響は知覚変化・学習能力低下・運動失調があり、大麻を長期的に使用したときには精神障害・IQ低下・薬物依存の影響があります。

大麻は使っても犯罪にならないの?の質問については、大麻は使用罪がないので使用しても罪にならないという誤解が発生しています。大麻は繊維としても使用されて産業用大麻を作るときに誤って吸ってしまうこともあるので使用罪がないだけでした。この点についても法改正が行われ、大麻の使用に関する処罰規定が新たに適用されるようになりました。

改正では、医療用用途について大麻草から製造された医薬品の使用を可能にしました。CBD(カンナビジオール)は、癲癇の一種であるドラべ症候群やレノックス・ガストー症候群の発作頻度を低下させる働きがあります。

大麻取締法改正では、部位規制から成分規制へ変更され所持、譲渡、輸入規制も麻向法に基づく罰則の強化(5年→7年)麻向法の免許制度も盛り込まれました。CBDを含む製品についても含有量の具体的な製品例を例示。大麻草の栽培に関する規制も一部改正されました。

次に、我が国における薬物乱用の状況についてお話をいただきました。現在高校生で過去1年以内に市販薬の薬物乱用の経験があるのは60人に1人というデーターもあります。

大麻とオーバードーズ(以下OD)の動機についても違いがあります。大麻は好奇心や興味本位であるのに対して、ODは死にたい・つらい気持ちから解放されたいというネガティブな動機が多い傾向にあります。

孤立・ストレスがODについては問題であり「人とのつながりを求めて薬物をはじめ、皮肉にもその薬物はつながりを破壊し、孤立を生む」現状があります。そのような場合、一人で悩まずに専門家に相談しましょう。親がストレスになっているケースも薬物乱用が疑われている児童生徒には個別に指導が必要です。薬物乱用防止をサポートする窓口の例も把握しておいてください。

最後に薬物乱用防止教室について~防止教室の進め方についてお話をしていただきました。薬乱教育開始年齢も小学生から教育が必要になってきています。

薬剤師が学校教育に参画するためには専門知識があればいいわけではなく、教育スキルも当然必要で実施する学校ごとでも違いがあって当然です。教科保健で薬物乱用防止教室を行うより学校行事や学級活動等の特別活動の時間でおこなうとやりやすいです。

中学校や高校では薬物乱用防止教室の開催率は高いものの、薬剤師が講師を務める機会はまだ少ないのが現状です。

外部の専門家の協力授業における留意点は、学習目標を明確にして学習者分析を行うことが大切で、学習スタイルの工夫も行い習得評価・事前準備も大事です。

今回の講演では、いろいろな事を学ぶことができ明日からの学校薬剤師業務につなげたいと思います。

次に、学校環境衛生検査機器について清水先生にお話をしていただきました。

北川式ガス検知管とCO2モニターについての使用上に注意点について話をしていただきました。

その後、薬の正しい使い方~オーバードーズの授業をしてみて感じたこと~について常國から紹介させていただきました。Googleフォームを用いて事前アンケートを行い実際の講義の内容をより細かく分析して行うことが出来るといった内容でした。

少々時間がオーバーしましたがとても内容の濃いセミナーになりました。

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