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vol.283 2026年9月号

視覚化する味覚 食を彩る資本主義

著者 久野 愛 / 出版社 岩波新書1902 
万成病院 森本 宏

色は、味や形など食べ物が持つ特徴のうちのほんの一部であるものの、人の食欲を掻き立てる。単なる物理的な食べ物の見た目であるだけでなく、自然と技術とが交錯し、味覚と視覚が絡み合い、そして生産者や消費者、更には政府がせめぎ合う諸相を呈している。この自然な色やあるべき色と考えるようになった色である。グローバル化が進み、食べ物が国を越えて手に入るようになり、美味しい色や自然な色は万国共通にみえる。だが実際にはどんな色が食べ物の自然な色かは、時代によって変化し、国、文化によって異なっている。

人類は色彩化革命の一端を担い、印刷技術と広告産業で、食べ物のイラスト広告に力を入れた。

自然なる色として食品産業では、購買意欲を刺激するような色彩に力を注いだ。そして、大きく貢献したのは、合成着色料の開発であった。美味しく、自然な色を安価に作り出されるようになった。

食品着色料と加工食品産業の拡大によって、アメリカ家庭の食卓は、人工的に着色された商品が数多く並ぶようになった。しかし着色料の安全性は大丈夫か?アメリカ政府から法改正の動きが出てきた。

アメリカでは、黄色いバナナが市場を独占した。オレンジは、黄色とオレンジ色。バターやマーガリン、チーズの色の決定。

野菜では、レタス、ニンジン、キャベツ、トマトなどテレビ映りの良い家庭向け合成着色料が開発されて、消費者に大アピールした。インスタント食品の流行時代になると、家事の在り方や料理を通した女性らしさの概念、そして女性らしさの体現の仕方を変えるようになった。

コラム 和菓子の美学

和菓子は五感の総合芸術である。和菓子は味や香り、見た目、舌触りなど五感を通じた芸術であり、季節感や自然、時代の移り変わりを感じ取るものである。和菓子は日本の伝統的な菓子あり、砂糖の流通の拡大した江戸時代から盛ん。菓子を通して、自然の色や形を表現した。菓子そのものを、花や動物、自然現象に見立てて、見る人、食べる人に四季や自然を感じてもらった。

視覚性、味覚性は人間社会や文明の近代化の象徴だと言われよう。それは感情の歴史であり、人間の根本的な世界感である。

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