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vol.280 2026年3月号

抗体医薬の名称が教えるもの:新命名規則への移行

岡山県病院薬剤師会DI委員会 春木 祐人

近年、がん領域や自己免疫疾患のみならず、多岐にわたる疾患で抗体医薬が臨床の主役となっています。私たちが日常的に耳にする「~マブ(-mab:monoclonal antibody)」という名称ですが、実は2021年以降、命名ルールが大きく変更されていることをご存知でしょうか。

従来の命名ルールと限界

これまでは、語幹(suffix)の「-mab」の前に、由来を示す「-u-(完全ヒト型)」や「-xi-(キメラ型)」、標的を示す「-li(m)-(免疫系)」や「-t(u)-(腫瘍)」などを組み合わせるのが通例でした。例えば「アダリムマブ」であれば、「免疫系を標的としたヒト型抗体」であることが一目で判別できたのです。

しかし、抗体医薬の開発が爆発的に進んだ結果、使用できるアルファベットの組み合わせが限界に達し、WHOは命名規則の刷新を決定しました。

新しい4つのカテゴリー

新ルールでは、由来を示す中間語(infix)が廃止され、構造や特性に基づいた4つの新しい語幹が導入されました。

新語幹読み対象となる抗体の特徴
-tug~ツグ未修飾抗体(unmodified immunoglobulins)
-bart~バルト人工抗体(antibody artificial)
-mig~ミグ多重特異性抗体(multi-immunoglobulin)
-ment~メントフラグメント抗体(fragment

また、疾患領域等を示すサブステムも細分化されました。従来、免疫調節作用は「-li-」に集約されていましたが、新ルールではアレルゲンを意味する「-ler-」、免疫賦活の「-sto-」、免疫抑制の「-pru-」などが追加され、より詳細な分類が可能となっています。

現場での視点

最近承認された新薬の名称に、違和感を覚えた方もいるかもしれません。これまでの感覚では「マブ」で終わらない名称が登場し始めているからです。今後は「~タツグ」や「~バルト」といった名称が一般的になっていくでしょう。

名称から薬剤の構造的特徴を推測することは、副作用プロファイルや安定性を理解する一助となります。新旧のルールが混在する過渡期ではありますが、名称の末尾に注目することで、その一剤が持つ「設計思想」が見えてくるはずです。

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