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vol.279 2026年1月号

市販薬ODの現実と、薬剤師にできること
─ 学術大会から見えた予防教育のこれから ─

副会長 清水 圭子

令和7年10月12日・13日に京都国際会館で開催された第58回日本薬剤師会学術大会では、学校薬剤師による健康教育・薬物乱用防止教育・地域連携の新たな展開が注目されました。特に市販薬の過量服用(オーバードーズ:OD)をめぐる実態と、若年層への教育の在り方が重点的に議論されました。

ランチョンセミナーでは、「脅し型の指導では子どもに届かない」「孤立や不安を抱えた生徒が“助けを求める力”を身につけられる授業が必要」との指摘があり、カードワークやロールプレイなど体験型授業の有効性が示されました。相談窓口のQRコードを配布し、授業後に生徒が実際に相談へつながった事例も紹介されました。

特別講演では、市販薬や処方薬による依存患者が覚醒剤・大麻を上回るという全国精神科病院調査の結果が報告されました。SNSでの誤情報拡散、登録販売者制度の緩和による入手容易化など社会構造の変化も問題視され、薬剤師は「販売者」ではなく「リスクコミュニケーター」として、教育と相談体制整備に関与すべきと提言がありました。

分科会および口頭発表では、学校薬剤師が授業、環境衛生、アレルギー対応、感染対策、教材開発など多領域で役割を拡大していることが共有されました。発達段階に応じた授業モデルの確立や、評価指標の整備、教育委員会との協働など、実践から制度化へ進む動きも見られました。

今回の大会は、学校薬剤師が「子どもたちの健康を守る専門職」として、教育・地域・行政をつなぐ存在になりつつあることを強く示すものとなりました。OD問題をはじめ、子どもの心身を支える場面は今後さらに広がります。薬剤師が“安心して相談できる大人”として地域に根づくことが、これからの予防教育の鍵だと感じます。

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