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vol.277 2025年9月号

薬用ハーブと薬物相互作用
~意外な落とし穴に注意~

岡山県病院薬剤師会 DI委員会 春木 祐人

健康志向の高まりとともに、サプリメントやハーブ製品を日常的に使用する患者が増えています。一般にサプリメントはビタミン・ミネラル類など栄養補助を目的とする一方、薬用ハーブは生薬由来成分を含み、体への薬理作用を持つものも少なくありません。そのため「自然由来」「副作用が少ない」イメージで薬剤としての意識が薄れ、相互作用への注意が欠けがちです。

有名なセントジョーンズワートは、CYP3A4の強力な誘導作用により多くの薬剤の血中濃度を低下させることが知られていますが、実はそれ以外のハーブにも相互作用のリスクが潜んでいます。

イチョウ葉エキス

認知機能改善目的で使用されますが、血小板凝集抑制作用を有し、抗凝固薬や抗血小板薬との併用で出血リスクが増加します。ワルファリンやアスピリンとの併用による出血の報告もあります。

エキナセア

免疫賦活作用を持ち、風邪の予防目的で使用されますが、ステロイドやシクロスポリンなどの免疫抑制薬の効果を減弱させる可能性があります。また、8週間以上の使用で肝障害が報告されており、アミオダロンやメトトレキサートとの併用でリスクが高まることがあります。

カモミール

リラックス効果が期待されるハーブですが、抗凝固薬や鎮静薬(アルコール含む)の効果を増強する場合があります。さらに、タモキシフェン、ホルモン補充療法薬、エストロゲン含有の経口避妊薬の作用を阻害する可能性があります。キク科アレルギーを持つ患者では、過敏反応のリスクも考慮が必要です。

ノコギリヤシ

前立腺肥大の症状緩和に用いられますが、抗アンドロゲン作用により、ホルモン治療中の患者に影響を及ぼす可能性があります。また、出血傾向を助長するとの報告もあり、抗血小板薬などとの併用に注意が必要です。

患者への服薬指導時には、「健康食品やサプリメントも含めて、現在使用しているものがあれば教えてください」といった積極的な声かけが、予期せぬ相互作用の防止につながります。自然=安全ではないという視点を、薬剤師として改めて意識することが重要です。

ハーブ名主な用途相互作用の懸念がある薬剤主な相互作用・注意点
イチョウ葉
エキス
認知機能改善、血流促進ワルファリン、アスピリン、DOACなど血小板凝集抑制作用により出血リスクが増加する可能性あり
エキナセア免疫賦活、
風邪予防
シクロスポリン、ステロイド、アミオダロン、メトトレキサート免疫抑制薬の作用減弱、長期使用で肝障害リスク上昇
カモミール鎮静、消化促進、抗炎症抗凝固薬、鎮静薬、ホルモン製剤、アルコール抗凝固・鎮静作用の増強、ホルモン作用への干渉、キク科アレルギーに注意
ノコギリヤシ前立腺肥大の症状緩和ホルモン療法薬、抗血小板薬抗アンドロゲン作用によりホルモン治療へ影響出血傾向を助長する可能性あり
セントジョーンズワート抗うつ(軽度~中等度)経口避妊薬、免疫抑制薬、抗てんかん薬、抗がん薬などCYP3A4、P糖タンパク質の強力な誘導により薬効が低下。相互作用頻度が高いため注意が必要

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