平素よりプレアボイド報告事業へご理解ご協力をいただきありがとうございます。2026年4〜6月分のプレアボイド報告として、167施設より延べ452件の報告をいただきました。業務等でご多忙の中、ご報告いただき誠にありがとうございます。報告いただいたプレアボイド事例の中から分類毎にいくつかの事例を紹介します。ご確認いただき、日々の業務等にお役立ていただけますと幸いです。
治療歴や併用薬の確認が、重複投与の回避や治療内容の適正化に繋がった事例
残薬の確認による入院中の処方変更内容の外来処方への反映
糖尿病に対してマンジャロ®皮下注(チルゼパチド)2.5 mgとメトホルミン錠250 mgが処方された患者。残薬調整のため持参された薬剤に、当薬局で調剤歴がなく、お薬手帳にも記載のないデベルザ®錠(トホグリフロジン水和物)20 mgとジャヌビア®錠(シタグリプチンリン酸塩水和物)50 mgが含まれていた。マンジャロ®皮下注とジャヌビア®錠は作用点が重複し、通常併用されないことから、入院中に処方変更があった可能性を考え病院に問い合わせた。その結果、入院中にマンジャロ®皮下注からジャヌビア®錠へ変更され、デベルザ®錠が追加されていたことが確認された。処方医に疑義照会してその旨を情報提供したところ、マンジャロ®皮下注は削除され、ジャヌビア®錠とデベルザ®錠が追加となり、入院中に変更された治療内容が外来処方に反映された。
お薬手帳とマイナンバーカードの確認によるビスホスホネート製剤の重複投与回避
リセドロン錠17.5 mgが初めて処方された患者。お薬手帳を確認したところ、処方元とは別の医療機関でイバンドロン酸静注が投与されていることが記載されており、マイナンバーカードによる薬剤情報の確認でも投与歴が確認された。両剤はいずれもビスホスホネート製剤であり、同種薬の重複投与となるため疑義照会したところ、リセドロン錠は削除となった。


処方開始・変更時の投与量確認が、適正な投与量の確保に繋がった事例
フェブキソスタット錠の適正な初回投与量への変更
高尿酸血症の治療を開始する患者に、フェブキソスタット錠が20 mg/日で処方された。フェブキソスタット錠は、治療初期の血清尿酸値の急激な低下により痛風関節炎が誘発されることがあるため、10 mg/日から開始し、患者の状態を観察しながら徐々に増量することとされているため、処方医に疑義照会したところ、フェブキソスタット錠は20 mg/日から10 mg/日に変更となった。
併用薬や最新の安全性情報の確認が、併用禁忌の回避に繋がった事例
複数診療科の処方確認による併用禁忌薬の投与回避
循環器内科からエプレレノン錠が新規処方された患者。薬歴を確認したところ、皮膚科からイトリゾール®カプセル(イトラコナゾール)が処方されていることに気付いた。両剤の併用によりエプレレノンの血中濃度が上昇し、高カリウム血症を誘発するおそれがあるため併用禁忌であり、疑義照会したところ、エプレレノン錠はミネブロ®錠(エサキセレノン)に変更となった。
- ミネブロ®錠とイトラコナゾールは併用注意であり、併用時には血清カリウム値をより頻回に測定するなどの注意が必要です。
電子添文改訂の確認によるクラリスロマイシン錠とアゼルニジピン錠の併用回避
クラリスロマイシン錠200 mgを継続服用している患者。降圧薬がアゼルニジピン錠8 mgに変更となり、両剤が継続して処方されていた。今回の調剤時に最新の電子添文を確認したところ、2026年3月の改訂により両剤が併用禁忌となっていた。クラリスロマイシンによるCYP3A阻害によりアゼルニジピンの血中濃度が上昇し、作用が増強するおそれがあるため疑義照会したところ、アゼルニジピン錠はアムロジピン錠2.5 mgに変更となった。

患者背景と薬剤特性の確認が、適切な薬剤選択に繋がった事例
腎機能に応じたジャヌビア®錠からトラゼンタ®錠への変更
2型糖尿病に対してジャヌビア®錠(シタグリプチンリン酸塩水和物)を100 mg/日で継続服用している患者。腎機能が徐々に低下し、今回のeGFRは50 mL/min/1.73 m²未満であった。ジャヌビア®錠は腎機能に応じた用量調節が必要であり、現在の投与量は推奨用量を上回るため、疑義照会し、腎機能による用量調節が不要なトラゼンタ®錠(リナグリプチン)かテネリア錠(テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物)への変更を提案したところ、トラゼンタ®錠に変更となった。
パーキンソン病患者に対するプリンペラン®錠の投与回避
パーキンソン病の患者にプリンペラン®錠(メトクロプラミド)が処方された。メトクロプラミドはドパミンD2受容体遮断作用により錐体外路症状を引き起こし、パーキンソン病の症状を悪化させるおそれがあるため疑義照会したところ、中枢移行性の低いナウゼリン®錠(ドンペリドン)に変更となった。
患者の訴えや服薬後の経過把握が、早期対応に繋がった事例
患者からの体調相談を踏まえた受診勧奨と入院対応
心不全に対してトルバプタンOD錠、フロセミド錠、トラセミドOD錠等の複数の薬剤を服用している患者から、尿量減少、体重減少傾向、食欲低下、便秘、口渇があるとの問い合わせがあった。浮腫は認めていなかったが、患者の訴えから心不全の悪化、脱水、腎機能低下、利尿薬の効果低下等の可能性を考慮して受診を勧奨したところ、受診後直ちに入院となった。
服薬後フォローアップによるデエビゴ®錠の減量と薬剤変更
不眠症に対してデエビゴ®錠(レンボレキサント)5 mgが1錠就寝前で処方された患者。数日後に電話でフォローアップしたところ、翌朝の眠気とふらつきが認められたため、トレーシングレポートで処方医に報告した。その結果、デエビゴ®錠5 mgは半錠服用となった。再度フォローアップしたところ、眠気とふらつきは消失したが、不眠が継続していたため、その旨を処方医に報告した。後日、デエビゴ®錠はラメルテオン錠8 mgに変更となり、再度のフォローアップで睡眠の改善とふらつきがないことを確認した。
実際の使用状況の確認が、安全な薬剤使用に繋がった事例
点眼容器の使用状況確認による不適切な使用方法の改善
ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液を継続使用している患者。使用状況を確認したところ、容器が固く点眼液を出すことができないため、毎回フィルターに針で穴を開けて使用していることが分かった。使用開始時には開栓方法を説明していたが、患者は針で穴を開けることが正しい開栓方法であると認識していた。患者はリウマチがありPF(Preservative Free:防腐剤フリー)デラミ容器®の使用が困難であることに加え、フィルターに穴を開けることで点眼液の品質が損なわれるおそれがあるため、処方医に情報提供したところ、フィルターのない通常容器の点眼液に変更となった。
PICK UP事例 No.1
RMP資材を用いた服薬指導が、生活状況に適した治療薬への変更に繋がった事例
70代女性、認知機能低下のある患者。今回、新たにフォシーガ®錠(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)5 mgが処方された。RMP資材を用いて、清潔保持を含むSGLT2阻害薬服用中の生活上の注意を説明していたところ、同席していた夫から、実行することは難しいとの発言があった。詳しく聴取すると、患者の入浴は夫がすべて介助しており、介護者の体力的な負担から4日に1回が限界であること、患者本人が介護サービスの利用を拒否していることが分かった。認知機能や生活状況、介護者の負担を踏まえると、必要なセルフケアを継続して行うことが困難と考え、疑義照会し、患者および介護者の生活状況を情報提供したところ、フォシーガ®錠は他の糖尿病治療薬に変更となった。
解説
フォシーガ®錠(ダパグリフロジン)は、腎臓の近位尿細管におけるグルコースの再吸収を抑制し、尿中へのグルコース排泄を促進するSGLT2阻害薬です。患者向けRMP資材では、尿路・性器感染症への対策として、排尿・排便後に清潔を保つことや、症状が認められた場合には医療機関へ相談することが示されています1。なかでも、ダパグリフロジンの臨床試験を統合した解析では、性器感染症の発現割合はプラセボ群0.6%に対し、ダパグリフロジン群では5.5%と約9倍であり、女性で多く認められました2。実臨床研究でも、女性であることは、SGLT2阻害薬開始後の性器感染症の主要なリスク因子の一つとして報告されています(ハザード比3.64、95%信頼区間3.23–4.11)3。
また、SGLT2阻害薬は浸透圧利尿により体液量を減少させることがあります。フォシーガ®錠の適正使用資材では、高齢者や認知症などにより介助を必要とする患者は、脱水を起こしやすい患者として注意が必要とされています4。高齢者では年齢だけで投与の適否を判断するのではなく、飲水、清潔保持、副作用症状の把握、シックデイ時の対応を、患者本人または介護者が実行できるかを確認することが重要です。ただし、認知機能低下があることや、入浴が4日に1回であることだけを理由に、SGLT2阻害薬が一律に不適切となるわけではありません。本事例では、RMP資材を用いた説明中の夫の発言をきっかけに詳しく聴取したことで、患者の認知機能だけでなく、入浴をすべて担う夫の身体的負担や、介護サービスの利用が難しい状況まで把握することができました。
RMP資材は、患者や家族に注意事項を一方向に伝えるためだけのものではありません。説明した内容を実際の生活の中で実行できるかを確認し、患者や家族が抱えている問題を引き出すためのコミュニケーションツールとしても活用できます。本事例は、資材を用いた服薬指導を契機として患者と介護者の生活状況を把握し、その情報を処方医と共有することで、生活状況に適した治療薬への変更に繋がった事例でした。
1アストラゼネカ株式会社.フォシーガ®錠を服用される方・ご家族の方へ(患者向けRMP資材)
2Diabetes Obes Metab. 2018;20:620–628.
3BMJ Open Diabetes Res Care. 2020;8:e001238.
4アストラゼネカ株式会社.フォシーガ®錠 適正使用のしおり
(事例は添付文書等の記載に基づき、一部編集して掲載しています)
報告時の注意点
プレアボイドとは、薬学的介入により患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例が該当します。「医師へ報告した」「医師へ検討を依頼した」のみで処方変更や検査の追加、副作用の軽減などがない事例はプレアボイドには該当しませんのでご注意ください。プレアボイド報告入力時には、疑義照会・処方提案・服薬指導等により、どのようなアウトカムが得られたか(どのような不利益を回避・軽減したか)を意識して記載いただきますようお願いいたします。岡山県薬剤師会会報2020年3月号p.9「プレアボイド報告フローチャート」もご参考ください。
本委員会では、以下を目的として、皆様からご報告いただきました情報を共有させていただきます。
- 未だ確立されていない薬局プレアボイドを標準化(定義化)すること
- 分析・収集した情報を地域へ還元し、薬局と病院・診療所間の連携を促進すること
- 薬局と病院・診療所間で情報共有できるシステムを構築・運用し、地域において安定的に情報収集・分析・共有ができる仕組みを確立すること
- 地域(支部)の活動において、プレアボイド事例が薬薬連携の充実のための重要なファクターとして認知され、薬剤師職能向上のために活用されるようにすること
- 薬局薬剤師が普段から行っている薬剤師業務を見える化し、薬剤師職能を国へアピールし、薬剤師職能が認められるようにすること
引き続き継続的なプレアボイド報告をお願いいたします
安全管理特別委員会では「プレアボイドの実践とプレアボイド報告入力」 に関する支部研修会を開催しています!
- プレアボイドは聞いたことがあるけどよく分からない
- プレアボイド報告に興味はあるけど、忙しくてなかなか一歩を踏み出せない
- Pharma-PROsは知っているけど使い方がよく分からない

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お気軽に岡山県薬剤師会事務局までお問い合わせください!