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vol.282 2026年7月号

薬局プレアボイド@おかやま(2026年1〜3月報告分)

委員長 田坂 祐一
副委員長 立野 朋志

平素よりプレアボイド報告事業へご理解ご協力をいただきありがとうございます。2026年1〜3月分のプレアボイド報告として、96施設より延べ248件の報告をいただきました。業務等でご多忙の中、ご報告いただき誠にありがとうございます。報告いただいたプレアボイド事例の中から分類毎にいくつかの事例を紹介します。ご確認いただき、日々の業務等にお役立ていただけますと幸いです。

患者背景の確認が不適切な薬剤投与の回避に繋がった事例

妊娠後期患者におけるイブプロフェン錠の投与回避

妊娠後期の患者にイブプロフェン錠が処方された。妊娠後期では胎児の動脈管収縮等のリスクがあるため処方医に疑義照会したところ、アセトアミノフェン錠へ変更となった。

授乳中の患者におけるフスコデ®配合シロップの投与回避

フスコデ®配合シロップが処方された患者。服薬指導時に授乳中であることを聴取した。フスコデ®配合シロップにはジヒドロコデインリン酸塩が含まれており、母乳への移行により乳児への影響が懸念されるため処方医に疑義照会したところ、メジコン®配合シロップへ変更となった。

  • ジヒドロコデインリン酸塩の類似化合物(コデイン)で、母乳への移行により、乳児でモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告があり、電子添文では「本剤投与中は授乳を避けさせること」となっている。

インフルエンザ患児における幼児用PL®配合顆粒の投与回避

インフルエンザ陽性の未就学児に、幼児用PL®配合顆粒、ゾフルーザ®顆粒(バロキサビル マルボキシル)、アセトアミノフェン細粒が処方された。幼児用PL®配合顆粒は、インフルエンザの小児ではライ症候群との関連が懸念されるため処方医へ疑義照会したところ、幼児用PL®配合顆粒はアスベリン®シロップ(チペピジンヒベンズ酸塩)およびカルボシステインシロップへ変更となった。

患者病態・併用薬の確認が病態禁忌薬の投与回避に繋がった事例

前立腺肥大症治療薬の確認によるチキジウム臭化物の投与回避

新規にチキジウム臭化物カプセルが頓服で処方された患者。併用薬を確認したところ、タムスロシン塩酸塩を服用中であり、前立腺肥大症に対して治療中であることが確認された。チキジウム臭化物は抗コリン作用により排尿困難を悪化させるおそれがあり、前立腺肥大による排尿障害がある患者では禁忌に該当するため疑義照会したところ、チキジウム臭化物カプセルはロペラミド塩酸塩カプセル頓服へ変更となった。

腎機能・体重等の患者情報確認が適切な投与量調節に繋がった事例

腎機能に応じたタリオン®OD錠の減量提案

鼻汁症状に対してタリオン®OD錠(ベポタスチンベシル酸塩)10 mgが1回1錠、1日2回で処方された患者。クレアチニンクリアランスは34.7 mL/minであり、中等度の腎機能障害を認めた。腎機能低下によりベポタスチンの血漿中濃度が上昇し、副作用が発現しやすくなる可能性があるため処方医に疑義照会したところ、タリオン®錠10 mg 1回0.5錠へ減量となった。

体重確認によるエピペン®注射液の規格変更

食物アレルギーのある未就学児にエピペン®注射液(アドレナリン)0.3 mgが処方された。母親より、患児の体重は19.7 kgであり、エピペン®注射液は初回処方であることを聴取した。体重30 kg未満の患者に0.3 mg製剤を投与すると過量となるおそれがあるため処方医に疑義照会したところ、エピペン®注射液0.15 mgへ変更となった。

  • エピペン®注射液の電子添文では、通常、アドレナリンとして0.01 mg/kgが推奨用量であり、体重30 kg未満の患者に0.3 mg製剤を投与すると過量となるおそれがある旨が記載されている。

併用薬の確認が薬物間相互作用や併用禁忌薬の投与回避に繋がった事例

CYP3A4阻害薬との併用確認によるデエビゴ®錠の副作用回避

クラリスロマイシン錠(強いCYP3A4阻害薬)が処方された患者。お薬手帳より、デエビゴ®錠(レンボレキサント)5 mgの服用を確認した。両剤の併用によりレンボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠等の副作用が増強するおそれがあるため、クラリスロマイシン錠の処方医に疑義照会し、クラリスロマイシン錠は他の抗菌薬へ変更となった。

併用禁忌薬の確認によるラツーダ®錠の薬効減弱回避

ラツーダ®錠(ルラシドン塩酸塩)が処方された患者。薬歴を確認したところ、他院よりアレビアチン®錠(フェニトイン:CYP3A4を強く誘導する薬剤)が定期処方されていた。両剤の併用によりルラシドンの代謝が促進され、ラツーダ®錠の作用が減弱される恐れがあるため両剤は併用禁忌である。ラツーダ®錠の処方医に疑義照会し、情報提供したところ、ラツーダ®錠はルーラン®錠(ペロスピロン塩酸塩水和物)へ変更となった。

鉄剤との同時服用確認によるマスーレッド®錠の薬効減弱回避

マスーレッド®錠(モリデュスタットナトリウム)とクエン酸第一鉄Na錠が、いずれも朝食後服用で処方されていた。マスーレッド®錠は鉄を含む経口製剤との同時投与により吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるため、服用時点の変更について処方医に疑義照会したところ、クエン酸第一鉄Na錠は夕食後服用に変更となった。

  • マスーレッド®錠の電子添文では、多価陽イオンを含有する経口製剤により本剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるため、併用する場合は前後1時間以上間隔をあける旨が記載されている。

同種同効薬・配合剤成分の確認が重複投与の回避に繋がった事例

配合剤中の有効成分確認によるボグリボースの重複投与回避

グルベス®配合OD錠(ミチグリニドカルシウム水和物・ボグリボース)を1日3回毎食直前で服用中の患者に、ボグリボースOD錠0.2 mgが1日3回毎食直前で追加処方された。グルベス®配合OD錠にはボグリボース0.2 mgが含まれているため、同一成分の重複投与に該当すると判断し疑義照会したところ、ボグリボースOD錠は中止となった。

同一有効成分を含むアレジオン®製剤の重複使用回避

アレジオン®眼瞼クリーム(エピナスチン塩酸塩)とアレジオン®LX点眼液(エピナスチン塩酸塩)が同時に処方された。患者に確認したところ、両剤とも併用するよう説明を受けていた。いずれもエピナスチン塩酸塩を有効成分とし、アレルギー性結膜炎に使用される薬剤であるため、重複使用の可能性を考慮して疑義照会したところ、アレジオン®LX点眼液は中止となった。

活性型ビタミンD製剤の重複確認による高カルシウム血症の回避

骨粗鬆症治療目的でアルファカルシドールカプセルが新規処方された患者。お薬手帳を確認したところ、他院からエルデカルシトールカプセルが処方されていた。いずれも活性型ビタミンD製剤であり、高カルシウム血症等のリスク増大が懸念されたため処方医に疑義照会したところ、アルファカルシドールカプセルは処方削除となった。

PICK UP事例 No.1

ケレンディア®錠の増量時に生物学的同等性の違いを確認し、適切な規格選択に繋がった事例

ケレンディア®錠(フィネレノン)10 mgを1日1回服用中の患者。今回、患者本人より、処方医から「増量する」と説明を受けていたことを聴取した。処方内容を確認したところ、ケレンディア®錠10 mgが2錠、1日1回で処方されており、10 mg錠を2錠服用することで20 mg相当へ増量する意図があると考えられた。ケレンディア®錠の電子添文には、「10 mg錠と20 mg錠の生物学的同等性は示されていないため、20 mg又は40 mgを投与する際には10 mg錠を使用しないこと」と記載されている。そこで処方医に疑義照会したところ、ケレンディア®錠は20 mg錠を1錠、1日1回へ変更となった。


解説

ケレンディア®錠(フィネレノン)は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であり、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に対して使用されてきました。さらに、2025年12月に慢性心不全への適応を取得しており、今後、薬局で本剤の処方に接する機会は増えていくと考えられます。

本事例の重要な点は、「10 mg錠2錠」と「20 mg錠1錠」を同一の投与方法として扱えない点です。多くの薬剤では、同一成分で総投与量が同じであれば、規格違いによる錠数調整が行われることがあります。しかし、ケレンディア®錠では、電子添文上、10 mg錠と20 mg錠の生物学的同等性が示されていないため、20 mg又は40 mgを投与する際には10 mg錠を使用しないことが明記されています。

生物学的同等性の判定では、一般にAUCとCmaxが重要な評価指標となります。ケレンディア®錠では、日本人健康成人を対象に10 mg錠2錠と20 mg錠1錠を比較した生物学的同等性試験が実施され、20 mg錠1錠に対する10 mg錠2錠のAUCは106.84%[90%信頼区間:102.55〜111.31%]であり、生物学的同等性の許容域内でした。一方、Cmaxは117.66%[90%信頼区間:106.26〜130.27%]であり、90%信頼区間の上限が許容域である125%を超えていました。したがって、AUCでは同等性の基準を満たしたものの、Cmaxでは基準を満たさず、10 mg錠2錠と20 mg錠1錠の生物学的同等性は示されなかったと判断されています1。この結果を踏まえ、電子添文では「20 mg又は40 mgを投与する際には10 mg錠を使用しないこと」と明記されており、処方監査では総投与量だけでなく、投与量に対応した規格が選択されているかを確認することが重要です。

また、ケレンディア®錠は血清カリウム値およびeGFRに基づいて開始・増量・中止を判断する薬剤です。投与開始又は再開、増量から4週間後、その後も定期的に血清カリウム値およびeGFRを測定し、電子添文での記載に従った用量調節が求められています。

本事例では、患者からの「増量すると聞いている」という情報を契機に、薬局薬剤師が処方内容と電子添文上の規格選択の注意点を確認し、10 mg錠複数錠による増量を回避することができました。ケレンディア®錠を調剤する際には、血清カリウム値、eGFR、併用禁忌薬・併用注意薬に加えて、20 mg又は40 mg投与時に10 mg錠を使用していないか確認することも重要なポイントです。

1ケレンディア®錠 医薬品インタビューフォーム 2024年8月作成(第6版)

(参考)規格間の生物学的同等性に関する注意を要する薬剤の例
ゾフルーザ®錠(バロキサビル マルボキシル)、カボメティクス®錠(カボザンチニブリンゴ酸塩)、
メキニスト®錠(トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物)、リムパーザ®錠(オラパリブ)など

(事例は電子添文等の記載に基づき、一部編集して掲載しています)


報告時の注意点

プレアボイドとは、薬学的介入により患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例が該当します。「医師へ報告した」「医師へ検討を依頼した」のみで処方変更や検査の追加、副作用の軽減などがない事例はプレアボイドには該当しませんのでご注意ください。プレアボイド報告入力時には、疑義照会・処方提案・服薬指導等により、どのようなアウトカムが得られたか(どのような不利益を回避・軽減したか)を意識して記載いただきますようお願いいたします。岡山県薬剤師会会報2020年3月号p.9「プレアボイド報告フローチャート」もご参考ください。

本委員会では、以下を目的として、皆様からご報告いただきました情報を共有させていただきます。

  1. 未だ確立されていない薬局プレアボイドを標準化(定義化)すること
  2. 分析・収集した情報を地域へ還元し、薬局と病院・診療所間の連携を促進すること
  3. 薬局と病院・診療所間で情報共有できるシステムを構築・運用し、地域において安定的に情報収集・分析・共有ができる仕組みを確立すること
  4. 地域(支部)の活動において、プレアボイド事例が薬薬連携の充実のための重要なファクターとして認知され、薬剤師職能向上のために活用されるようにすること
  5. 薬局薬剤師が普段から行っている薬剤師業務を見える化し、薬剤師職能を国へアピールし、薬剤師職能が認められるようにすること

引き続き継続的なプレアボイド報告をお願いいたします

安全管理特別委員会ではプレアボイドの実践とプレアボイド報告入力 に関する支部研修会を開催しています!

  • プレアボイドは聞いたことがあるけどよく分からない
  • プレアボイド報告に興味はあるけど、忙しくてなかなか一歩を踏み出せない
  • Pharma-PROsは知っているけど使い方がよく分からない

そんな方にオススメの分かりやすい入門編の研修会になっています。
お気軽に岡山県薬剤師会事務局までお問い合わせください!

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