―― 「対話」から「共働」へ、手になじむパートナーの育て方 ――
はじめに
医療業界にもDXの波が押し寄せる中、私が本稿でご紹介するのは「事務・経営分野におけるAI」の活用事例です。多忙を極める現場の先生方にとって、バックオフィス業務の効率化は、本来の患者対応や研鑽のための時間を確保するための重要な鍵となります。私の実体験が、AIと共生していく実務の現場における、一つの参考や刺激になればと思い筆を執りました。
AIエージェントとは
私が活用する「Antigravity」や「Cursor」といったAIエージェントは、ChatGPTのような対話型AIに「実務をこなす手足」を持たせた存在です。あらかじめユーザーが許可したワークスペース内で自律的にデータを探し、OCRで内容を読み解き、ExcelやPDFを書き換え、グループウェアへの登録やカレンダー設定までを指示一つで完遂します。何でも勝手に覗き見るソフトではなく、「決められた机の上で自律的に動く事務員」としてのコントロールされた性格を持っています。
直面した「影」と共生のルール
AIが人名を間違えたり金額の桁を誤ったりする「ハルシネーション」に直面した時、私は使用をやめるのではなく、「AIを動かすルール」を共に作る道を選びました。「必ず元のデータを確認すること」「保存や送信の前には必ず人間の許可を求めること」。こうした安全策をルールとして共有することで、AIは野放しの道具から信頼できる実務の代行者へと変貌しました。店舗情報や従業員リストという基本情報を常に最新の状態でAIと共有しておくことで、指示のたびに前提を説明する手間は消え、正確性は格段に向上しました。
「鳥の目」へ
使い始めて数ヶ月。今ではAIが私の癖を理解し、過去のやり取りの履歴を瞬時に検索して判断を補助してくれます。以前なら山積する細かなタスクに追われて「木を見て森を見ず」の状態になりがちでしたが、今は常にプロジェクト全体を俯瞰し、確信を持って次の判断を下せます。「AIに丸投げ」でも「必死に使いこなす」でもない、肩を並べて働くこのスタイルは、もはや手になじんだ職人道具のような感覚です。事務作業の「摩擦」が消え、思考がそのまま形になっていく——これが、AIエージェントとの新しい景色です。
