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vol.279 2026年1月号

薬局プレアボイド@おかやま(2025年7〜9月報告分)

委員長 田坂 祐一
副委員長 立野 朋志

平素よりプレアボイド報告事業へご理解ご協力をいただきありがとうございます。

2025年7〜9月分のプレアボイド報告として、86施設より延べ227件の報告をいただきました。業務等でご多忙の中、ご報告いただき誠にありがとうございます。報告いただいたプレアボイド事例の中から分類毎にいくつかの事例を紹介します。ご確認いただき、日々の業務等にお役立ていただけますと幸いです。

薬歴確認や患者情報の聴取が禁忌薬の投与回避に繋がった事例

食物アレルギー歴の確認による禁忌薬の投与回避

下痢に対してタンニン酸アルブミンが処方された患児。投薬時に母親より牛乳アレルギーであることを聴取した。牛乳アレルギーがある患者は、ショックまたはアナフィラキシーを起こすことがあるため禁忌であり、疑義照会したところ、タンニン酸アルブミンは削除された。

お薬手帳での併用薬確認による禁忌薬の投与回避

エボザック®カプセル(セビメリン塩酸塩水和物)が処方された患者。お薬手帳から、気管支喘息に対するフルティフォーム®エアゾール(吸入ステロイド剤・b2刺激薬)の処方が確認された。エボザック®カプセルは気管支収縮作用及び気管支粘液分泌亢進により症状を悪化させるおそれのため気管支喘息には禁忌であり、疑義照会したところ、エボザック®カプセルは麦門冬湯に変更された。

マイナポータルでの薬剤情報の閲覧による禁忌薬の投与回避

感冒症状に対してPL®配合顆粒が処方された患者。マイナポータルで薬剤情報を閲覧すると、他院からフリバス®錠(ナフトピジル)とザルティア錠(タダラフィル)が処方されていることが確認された。禁忌疾患である前立腺肥大症に該当すると考え、疑義照会したところ、PL®配合顆粒の処方は中止となった。

検査値に基づく疑義照会により処方が変更となった事例

腎機能に合わせたメトホルミン錠の投与量調節

メトホルミン錠が1,000 mg/日で処方された患者。検査結果を確認したところ、eGFRは38.2 mL/min/1.73m2であり、中等度腎障害(CKDステージ3b)であった。腎機能を踏まえた推奨用量に比べ過量であるため疑義照会し、メトホルミン錠は30≦eGFR(mL/min/1.73m2)<45の1日最高投与量の目安である750 mg/日に減量となった。

腎機能の推移に合わせたベンズブロマロン錠の処方可否に関する疑義照会

定期受診後に処方箋を持って来局した患者。処方箋の検査値を確認したところ、腎機能が以前より低下しており、eGFRは21.9 mL/minと高度腎障害に該当した。ベンズブロマロン錠は、高度腎障害のある患者は効果が期待できないことがあるため禁忌であり、処方医に疑義照会したところ、ベンズブロマロン錠は中止となり、フェブキソスタット錠10 mg/日が追加となった。

検査値に基づく病態の推論を踏まえた処方継続・中止に関する疑義照会

脂質異常症と高尿酸血症を治療中の男性患者。服薬指導時、医師から脂質異常症の薬を中止し、尿酸の薬は継続すると聞いた旨を聴取したが、処方内容は逆(パルモディア®錠[ペマフィブラート]は継続、フェブキソスタット錠が中止)であった。血液検査の結果を確認したところ、LDLコレステロール値は117 mg/dL、尿酸値は7.5 mg/dLであり、尿酸値に比べ、脂質のコントロールが良好であると思われた。患者は医師の処方通りの投薬を希望したが、検査値も踏まえて疑義照会したところ、患者に説明した内容(パルモディア®錠を中止、フェブキソスタット錠は継続)が正しいとのことであった。患者へは処方変更について説明し、変更後の内容で服薬指導を実施した。

服用薬の確認が同種同効薬投与や薬物間相互作用の回避に繋がった事例

OTC医薬品販売時のお薬手帳確認が同種同効薬の投与回避に繋がった事例

第1類医薬品であるガスター®10(ファモチジン)の購入を希望された来局者。お薬手帳を確認すると、エソメプラゾールカプセルを服用中であった。同種同効薬の併用に該当するため、その旨を来局者本人に説明し、ガスター®10は販売せず受診勧奨した。

マイナポータルでの薬剤情報の閲覧が同種同効薬の投与回避に繋がった事例

タケキャブ®錠(ボノプラザンフマル酸塩)が処方された患者、問診時のアンケートで逆流性食道炎の記載があった。マイナポータルで薬剤情報を閲覧すると、既に他院からラベプラゾールNa塩錠が処方されており、服用中であることが確認されたため、タケキャブ®錠の処方医に疑義照会したところ、今回の処方は中止となった。

複数診療科への疑義照会により併用禁忌薬の投与回避に貢献した事例

泌尿器科からタダラフィル錠が処方されている患者。胸痛を認めたため内科を受診し、ニトロペン®舌下錠(ニトログリセリン)が処方された。両剤は併用禁忌に該当するため、内科処方医に疑義照会したところ、次回の胸痛発作時にニトロペン®舌下錠が有効である場合、狭心症の確定診断に繋がることからニトロペン®舌下錠は中止できないため、泌尿器科から処方されているタダラフィル錠を中止にして欲しいとの回答であった。この旨を泌尿器科の処方医に伝え、タダラフィル錠の服用可否について問い合わせたところ、タダラフィル錠は中止となった。


薬歴の確認が薬物間相互作用の回避に繋がった事例

デエビゴ®錠(レンボレキサント)5 mgが処方された患者。薬歴を確認すると、他院でクラリスロマイシン錠(CYP3Aの強力な阻害薬)が処方されていることが確認された。両剤の併用でレンボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠等の副作用が増強されるおそれがあるため、併用する場合のデエビゴ®錠は2.5 mg/回とすることとされている。処方医に疑義照会し、デエビゴ®錠は5 mg/回から2.5 mg/回に変更となった。

薬歴管理を踏まえた疑義照会が継続的な薬物療法実施に繋がった事例

退院時情報提供書等の確認による中止薬剤の投与回避

退院後、初回受診後の患者にエルデカルシトールカプセルが処方されていた。退院時情報提供書とお薬手帳を確認したところ、高カルシウム血症のためエルデカルシトールカプセルは入院中に中止となっていた。処方医に確認したところ、エルデカルシトールカプセルは削除となった。

薬歴確認によるバイアスピリン®錠の処方もれ回避

ご家族が持参された定期薬の処方箋を確認したところ、前回まで処方されていたバイアスピリン®錠(アスピリン)が削除されていた。ご家族に確認すると、処方医から中止の話は聞いていないとのことであったため疑義照会したところ、バイアスピリン®錠は継続であり、処方が追加された。

PICK UP事例 No.1

セファゾリンによるアナフィラキシー歴のある患児における抗菌薬適正使用に貢献した事例

セファゾリンNaによるアナフィラキシーショックの既往を有する患児に対して、地域での溶連菌感染症の流行を背景に溶連菌感染が疑われ、ワイドシリン®細粒(アモキシシリン)が処方された。薬局薬剤師は、セフェム系抗菌薬での重篤なアレルギー歴からペニシリン系抗菌薬にも交差アレルギーの可能性があることを踏まえ、処方医に疑義照会を行った。疑義照会では、他の抗菌薬への変更も検討したが、溶連菌に対する耐性率が高く、培養検査による起因菌同定が難しい状況から、十分な有効性が期待できる代替薬を提示しにくいことを説明した。そのうえで、症状は比較的軽度であることとアナフィラキシーショックという重大な副作用歴を考慮し、抗菌薬投与をいったん中止し、症状悪化時に速やかな受診を促す対応を提案した。結果として抗菌薬は中止となり、翌日に別症状で再受診した際の検査で溶連菌は陰性、ウイルス性の感染症と診断された。


解説

b-ラクタム系抗菌薬は小児の溶連菌咽頭炎に広く用いられている一方、セフェム系・ペニシリン系間の交差アレルギーの可能性やマクロライド耐性溶連菌の増加など、安全かつ適正な抗菌薬選択が求められる場面は少なくありません。

系統的レビュー・メタ解析では、ペニシリンアレルギー歴を有する患者6,147例のうち、セファゾリンにもアレルギーを有する「二重アレルギー」は0.7%であり、セファゾリンアレルギー歴を有する患者におけるペニシリンアレルギーの頻度は3.7%と報告されています1。すなわち、セファゾリンアレルギー患者の多くはペニシリン系抗菌薬を問題なく使用できる可能性が示唆されますが、一定割合で二重アレルギーが存在することも事実です。本症例では、既往がアナフィラキシーショックという生命に関わる重篤反応であり、かつ溶連菌は「疑い」の段階であったことから、リスク・ベネフィットバランスを考慮してペニシリン系抗菌薬の投与可否が判断されました。

セフェム系・ペニシリン系の使用を避ける場合、マクロライド系等が代替候補となり得ますが、日本ではA群溶連菌のマクロライド耐性率が高いことが報告されています。特に、日本の小児咽頭扁桃炎由来A群溶連菌ではマクロライド耐性率が30〜60%程度であったとの報告があり2、代替薬としてマクロライドを安易に選択すると、治療失敗や耐性菌増加の一因となり得ます。厚生労働省の抗微生物薬適正使用の手引きでは、急性咽頭炎の原因の多くはウイルスであり、迅速抗原検査または培養検査でA群b溶血性レンサ球菌(GAS)が検出されていない症例に対しては抗菌薬投与を行わないこと、GASが検出された急性咽頭炎に対してアモキシシリンなどペニシリン系抗菌薬を第一選択とすることが示されています3。したがって、本症例において薬局薬剤師が、薬剤耐性の問題から代替薬の有効性が十分とは言えないことを医師に共有し、抗菌薬中止という選択肢を提示した点は、抗菌薬適正使用の観点からも重要といえます。

重篤な即時型アレルギー歴がある場合、「本当に今その抗菌薬が必要か」を必ず立ち止まって検討することが大切です。本症例では、薬局薬剤師が患者背景・アレルギー歴・耐性情報を踏まえて医師と協議し、「使うか・使わないか」を含めた共同の意思決定を行うことで、重大な副作用の回避と抗菌薬適正使用を両立させることができました。

1JAMA Surg. 2021;156(4):e210021.
2J Med Microbiol. 2020;69(3):443–450.
3厚生労働省. 抗微生物薬適正使用の手引き 第三版. 2023.

(事例は添付文書等の記載に基づき、一部編集して掲載しています)


報告時の注意点

プレアボイドとは、薬学的介入により患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例が該当します。「医師へ報告した」「医師へ検討を依頼した」のみで処方変更や検査の追加、副作用の軽減などがない事例はプレアボイドには該当しませんのでご注意ください。

プレアボイド報告入力時には、疑義照会・処方提案・服薬指導等により、どのようなアウトカムが得られたか(どのような不利益を回避・軽減したか)を意識して記載いただきますようお願いいたします。

岡山県薬剤師会会報2020年3月号p.9「プレアボイド報告フローチャート」もご参考ください。

本委員会では、以下を目的として、皆様からご報告いただきました情報を共有させていただきます。

  1. 未だ確立されていない薬局プレアボイドを標準化(定義化)すること
  2. 分析・収集した情報を地域へ還元し、薬局と病院・診療所間の連携を促進すること
  3. 薬局と病院・診療所間で情報共有できるシステムを構築・運用し、地域において安定的に情報収集・分析・共有ができる仕組みを確立すること
  4. 地域(支部)の活動において、プレアボイド事例が薬薬連携の充実のための重要なファクターとして認知され、薬剤師職能向上のために活用されるようにすること
  5. 薬局薬剤師が普段から行っている薬剤師業務を見える化し、薬剤師職能を国へアピールし、薬剤師職能が認められるようにすること

引き続き継続的なプレアボイド報告をお願いいたします。

安全管理特別委員会ではプレアボイドの実践とプレアボイド報告入力 に関する支部研修会を開催しています!

  • プレアボイドは聞いたことがあるけどよく分からない
  • プレアボイド報告に興味はあるけど、忙しくてなかなか一歩を踏み出せない
  • Pharma-PROsは知っているけど使い方がよく分からない

そんな方にオススメの分かりやすい入門編の研修会になっています。お気軽に岡山県薬剤師会事務局までお問い合わせください!

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