薬剤師の皆さんは、患者さんから「この市販薬(OTC)って、病院でもらう薬と同じ成分ですか?」と聞かれることがあると思います。セルフメディケーション推進の中、処方薬からOTCへ転用されたスイッチOTCの知識は不可欠です。スイッチOTCは、医療用医薬品と同じ成分を利用できるようにし、国民の健康維持に貢献しますが、適切に使われるためには専門家である薬剤師のサポートが非常に重要です。
医療用との「適応と制限」の違い
スイッチOTCで注意すべきは、医療用と同じ成分でも、適応症、用法・用量、使用期間が厳しく異なる点です。これは、OTCが医師の診断なしでの使用を前提としているため、安全性のマージンを大きく確保することが目的です。例えば、ロキソプロフェンNaは医療用が1日3回までに対し、OTCでは原則1日2回までと、服用回数に制限があります。さらにファモチジン(H2ブロッカー)は、医療用では胃潰瘍にも使用されますが、OTCでは「胃のむかつき」など軽度かつ限定的な適応で、3日間の使用制限が設けられています。
近年、強力な酸分泌抑制作用を持つプロトンポンプ阻害薬(PPI)が新たに加わりました。ランソプラゾールなどのPPIは、OTCでは「胸やけ」単独の適応に限定され、服用期間は2週間と厳格です。医療用が逆流性食道炎などの治療に用いられるのに対し、OTCで安易に長期連用することは、胃がんや重度の食道炎といった重大な疾患を見逃すリスクを高める要因となり得ります。
OTCは、自己判断による短期的な症状緩和が目的です。医療用とは異なり、添付文書に記載された厳格な制限を理解し、その限界と可能性を正確に伝えることが、患者さんの安全を支える鍵となります。効果の高いPPIがOTC化された今、医療用医薬品の知識を活かし、適切なセルフメディケーションをサポートする薬剤師の役割の重要性が一層高まっていると感じます。
| 成分名 | 医療用での主な用途 | OTCでの適応・制限 |
|---|---|---|
| ロキソプロフェンNa | 疼痛・炎症全般、発熱(通常1日3回) | 原則1日2回まで。 頓用・短期(3-5日程度)使用。 |
| ファモチジン (H2ブロッカー) | 胃潰瘍、逆流性食道炎など(広範) | 胃痛、もたれ、胸やけ、むかつき。 3日間で症状改善がないか。 |
| ランソプラゾール (PPI) | 胃潰瘍、逆流性食道炎の治療・維持 | 胸やけ、もたれ、胃痛。 2週間を超えて続けて服用しないこと。 |
表. 主要なスイッチOTCの「医療用」と「OTC」の違い