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vol.277 2025年9月号

変更調剤について

委員 中嶋 和生

医療の質の向上と患者中心の医療の実現に向け、薬剤師の役割が多様化・高度化しています。中でも「変更調剤」は、医師の処方意図を尊重しながら、患者の服薬状況や薬剤の供給状況を踏まえて、薬剤師が主体的に処方内容を調整する行為として、近年注目されています。

「変更調剤」とは、保険薬局において、処方医に事前に確認することなく(疑義照会を行わず)、処方薬を変更して調剤する行為です。従来は、後発医薬品の使用促進策の一つとして、「後発医薬品への変更調剤(別剤形・別規格への変更を含む)」が中心でした。しかし近年、医薬品の供給不足や出荷調整が頻発しており、薬剤師が柔軟に対応できる変更調剤の重要性が高まっています。

こうした状況を踏まえ、2024年3月15日 厚生労働省は事務連絡を発出し、変更調剤の範囲を拡大しました。

これにより、当面の間、医薬品の必要量が確保できずにやむを得ない場合、以下の変更調剤が可能となりました。

  1. 後発医薬品から先発医薬品への変更調剤
  2. 薬剤料が変更前を上回る場合の変更調剤
    ・含量規格が異なる後発医薬品への変更
    ・類似する別剤形の後発医薬品への変更
  3. 内服薬の分類間(ア⇔イ)の別剤形による後発医薬品への変更調剤

詳細は下記の通り 

(令和6年3月15日通知 現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて)
医薬品の入手が限定されること等により必要量が用意できないような
「やむを得ない場合」における当面の間の取扱い

  • 後発医薬品の銘柄変更において、変更不可でない場合、患者さんの同意があれば先発医薬品(含量規格が異なるもの又は類似する別剤形のものを含む)への変更調剤は可能に。
  • 変更調剤後の薬剤料が変更前のものを超える場合も、患者さんの同意があれば含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤は可能に。
  • 内服薬のうち、類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤がやむを得ず出来ない場合の次に掲げる分類間の別剤形(含量規格が異なる場合を含む)の医薬品への変更調剤は可能に。
    ア 錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤
    イ 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤する場合に限る)
    (例:アに該当する錠剤をイに該当する散剤への変更調剤)
    ただし、ウのグループ[液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤(内服用液剤として調剤する場合に限る)]への変更は認められていない。
  • 含量規格が異なる後発医薬品または類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤に関し、規格・剤形の違いにより効能・効果や用法・用量が異なる場合は従来通り対象外。
  • 上記対応を行った場合には、調剤した薬剤の銘柄等について、当該調剤に係る処方箋を発行した保険医療機関に情報提供すること。ただし、当該保険医療機関との間であらかじめ合意が得られている場合(疑義照会簡素化プロトコルに基づいた薬剤変更)は、当該合意に基づいた方法等による情報提供を行うことで差し支えない。

3/15の通知を踏まえ、変更調剤の主な種類(変更時のルール)を整理すると

内服薬の変更調剤

処方変更調剤従来の変更時のルール3/15通知
医薬品の必要量を確保できない場合
銘柄処方
変更不可✔
なしの場合  

【先発品】
(別銘柄)
【先発品】
全てにおいて変更調剤不可【疑義照会が必要】
【後発品】
薬剤料が同額以下
・同一剤形・同一規格
・別規格
・類似するグループ内別剤形
への変更可能
・同一剤形・同一規格
・別規格
・類似するグループ内別剤形
・グループ外別剤形(ア⇔イ)
において変更可能
【後発品】
薬剤料が同額超
同一剤形・同一規格のみ変更可能
(剤形変更、規格変更は不可)                  
銘柄処方

【後発品】
【先発品】変更調剤不可【疑義照会が必要】  ・同一剤形・同一規格
・別規格
・類似するグループ内別剤形
において変更可能
(別銘柄)
【後発品】
薬剤料が同額以下
・同一剤形、同一規格
・別規格
・類似するグループ内別剤形
への変更可能
・同一剤形・同一規格
・別規格
・類似するグループ内別剤形
・グループ外別剤形(ア⇔イ)
において変更可能
(別銘柄)
【後発品】
薬剤料が同額超
・同一剤形・同一規格のみ変更可能
(剤形変更、規格変更は不可)                           
一般名【先発品】・同一剤形・同一規格のみ選択可能(別剤形・別規格への変更は不可)           

■先発品を選択した場合■
調剤報酬明細書摘要欄に理由を記載(コード選択)
                
【後発品】
先発品と同額以下
・同一剤形・同一規格
・別規格類似するグループ内別剤形
への選択可能
・同一剤形・同一規格
・別規格
・類似するグループ内別剤形
・グループ外別剤形(ア⇔イ)
において選択可能
【後発品】
先発品と同額超
・同一剤形・同一規格のみ選択可能
(剤形変更、規格変更は不可)                               

補足:変更調剤は全て患者の同意が必要です。

(参考)【剤形分類】

同一グループ内のものは
同一剤形
(ア、イ、ウは別剤形)
錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤
散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、
ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤するに限る)
液剤、シロップ剤、
ドライシロップ剤(内服用液剤として調剤する場合に限る)

内服薬以外の変更調剤

  • 別剤形の後発医薬品への変更調剤は不可  例)先発(軟膏)→後発(クリーム)【×】
  • 含量規格が異なる後発医薬品への変更調剤は可能 例)先発(5g×2本)→後発(10g×1本)

適応症の違い

後発医薬品への変更が可能な処方箋において、処方箋に記載されている先発医薬品の用法・用量または併用薬などから後発医薬品が有しない効能・効果に係る使用が推測される場合には、処方医に対して照会が必要です。

なお、先発医薬品と効能・効果等に違いがある後発医薬品リストについては、日本ジェネリック製薬協会のホームページに掲載されているので参考にして下さい。(効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト.pdf

特定薬剤管理指導加算3(ロ)10点 【重点的に丁寧な説明が必要となる場合の評価】

  • 以下の場合、当該医薬品が最初に処方された1回に限り、特定薬剤管理指導加算3(ロ)を算定することができます。
    (1)調剤前に、後発医薬品が存在する先発医薬品であって一般名処方または銘柄名処方された医薬品について、先発医薬品を選択しようとする患者に対して「選定療養」に関する説明を行った場合
    (2)医薬品の供給状況が安定しないため、調剤時に前回調剤された銘柄の必要量が確保できず、前回調剤された銘柄から別銘柄の医薬品に変更して調剤された薬剤の交付が必要となる患者に対して説明を行った場合
  • 医薬品の供給状況を踏まえ説明を行い、特定薬剤管理指導加算3(ロ)を算定した際は、調剤報酬明細書(レセプト)の摘要欄に調剤に必要な数量が確保できなかった薬剤名を記載する必要があります。
  • 薬剤服用歴等にも、対象となる医薬品が分かるように記載して下さい。
  • 変更調剤した際、ケースに応じて特定薬剤管理指導加算3(ロ)が算定できますが、複数の銘柄を繰り返し変更する場合や薬局都合による変更(採用品の変更等)の場合は、算定できないため注意が必要です。

最後に

変更調剤は単なる“薬の置き換え”ではなく、患者の安全確保と治療の継続性を支えるとともに、薬剤師の専門性を活かした「服薬アドヒアランスの向上」や「医療資源の適正使用」につながる重要な医療行為です。

薬剤師としての高い倫理観と状況に応じた判断力をもとに、責任を持った変更調剤が実施できるよう変更ルールを正しく理解しておきましょう。
 

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