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vol.279 2026年1月号

PPIのスイッチOTC化と薬剤師の対応
―セルフメディケーション時代の新たな責務―

委員 小坂 一生

2025年、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の主要3成分―ラベプラゾール(パリエット®S)、オメプラゾール(オメプラール®S)、ランソプラゾール(タケプロン®S)―が相次いでスイッチOTC化され、胃酸関連疾患のセルフメディケーションは大きく前進しました。医療用と同一成分を含む薬剤が薬局で購入できるようになり、生活者自身が症状に応じて治療を選択できるようになったことは画期的です。

PPIは胃酸分泌の最終段階に関与するH⁺/K⁺-ATPase(プロトンポンプ)を不可逆的に阻害し、強力で持続的な酸分泌抑制作用を示します。一方で、効果が現れるまでに数日かかるため、即効性を求める方にはその特性を丁寧に説明することが大切です。OTC版では1日1回1錠、14日間以内の服用が原則であり、症状が続く場合には医療機関の受診を勧める必要があります。そのため、製品パッケージはすべて14日分以内のパッケージとして発売されています。

服用前には、既往歴(胃潰瘍・消化管出血・ピロリ菌治療歴など)や併用薬(抗凝固薬、抗血小板薬、NSAIDs等)を確認することが重要です。PPIはCYP2C19を介する薬物相互作用が多く、他剤の血中濃度を変化させる可能性があります。特に高齢者では、長期使用による低マグネシウム血症や感染症リスクも報告されており、薬剤師が適正使用を支援することが求められます。

スイッチOTC化は、単なる「医薬品の販売自由化」ではなく、薬剤師が生活者の健康行動を支援するための新しい契機です。薬剤師は、症状の聴取、使用期間や効果の説明、そして受診の勧奨までを一貫して行う“セルフケアのゲートキーパー”としての役割を発揮する必要があります。PPIの販売は要指導医薬品に分類され、薬剤師による対面での説明が義務づけられています。これは単なる制度上のルールではなく、専門職として果たすべき責務です。

今後、スイッチOTC化の拡大が進む中で、薬剤師には「薬を売る」だけでなく、「薬を正しく使ってもらう」ことを通じて地域医療を支える姿勢が求められます。PPIのスイッチ化は、その第一歩であり、薬剤師の専門性を社会に示す絶好の機会だといえます。

【要指導医薬品】(アリナミン製薬)
タケプロンS 14錠
効能効果:胸やけ、胃もたれ、胃痛(本剤は胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を含んでいます)
参考小売価格 税抜:2,280円

【要指導医薬品】(佐藤製薬)
オメプラールS 14錠
効能効果:胸やけ、胃もたれ、胃痛(本剤は胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を含んでいます)
参考小売価格 税抜:1,980円

【要指導医薬品】(エーザイ)
パリエットS 6錠/12錠
効能効果:胸やけ、胃もたれ、胃痛(本剤は胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を含んでいます)
参考小売価格 6錠 税抜:1,480円  12錠 税抜:1,980円

【出典:アリナミン製薬株式会社 公式サイト】
【出典:佐藤製薬 公式サイト】
【出典:エーザイ株式会社 公式サイト】
(閲覧日:2025年11月20日)

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