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vol.279 2026年1月号

第58回 日本薬剤師会学術大会

日時令和7年10月12日(日)~ 令和7年10月13日(月)
開催場所国立京都国際会館

副会長 成廣 和朗

分科会1 薬剤師が関わるセルフケア支援の未来へ参加

基調講演 厚生労働省 大臣官房審議官 佐藤大作先生

薬局・薬剤師の役割:従来の調剤・服薬指導に加え、OTC医薬品販売や健康相談など、未病者を含む地域住民の健康サポートを担う。

「健康増進支援薬局」は、地域住民の主体的な健康維持・増進を支援する中心的な役割を期待されている。また厚生労働省が実施する各種施策を紹介し、SCSMの啓発・推進を含め、地域住民の健康維持・増進を支援する薬局・薬剤師の今後の役割について講演された。

有限会社マスト薬局の例

薬局の健康サポート機能を地域に根付かせるには従来の受動的なアプローチでは困難。薬局の健康サポート機能を地域に浸透させるため、以下の3つの能動的なアプローチに切り替えた。

  • 能動的なアプローチ(専門性の強化と「食」への特化)
  • マスアプローチ(地域住民・企業へのセミナーの開催)
  • 連携によるアプローチ(フィットネスクラブとの連携)

PHR(Personal Health Record):生涯にわたる個人の健康・医療情報の定義、活用分野、社会実装の現状と今後の展望について

公的:「予防接種歴」「薬剤情報」「特定健診情報」などが本人に提供されており、今後は診断名、アレルギー情報、検査結果などへの対象情報の拡大

民間:PHRアプリ「健康日記」の紹介 PHR研究用に開発されたアプリで、体温、体重、血圧、歩数などの日々のデータを記録・閲覧できる。

常務理事 寺井 竜平

分科会4 小児在宅医療における高度な薬学的管理の実際

小児の在宅医療への薬剤師の関与は近年増加傾向にあり、行政からも高度な薬学的管理が強く期待されている。新たな地域医療構想においても、薬局・薬剤師は外来・在宅医療連携の要として位置づけられ、資質向上が急務である。

分科会では、保険薬局薬剤師の実践プロセスに関する質的帰納的研究が紹介された。小児在宅医療における薬剤師の臨床判断の中核は、「地域生活を可能とする医薬品・医療機器への最適化」と「患児の安全を確保する医薬品・医療機器への最適化」という二つの視点を統合することにある。この実践は、「患児の成長」と「家族の生活」をふまえたアプローチで熟考され、「専門職としての責務」と「家族へ寄り添う思い」を基盤として成り立っている。

知識の提供に留まらず、人間関係構築力と基礎薬学を関連付けたコンピテンシー、すなわちプロフェッショナリズムこそが、複雑な小児在宅医療の課題を解決する鍵であり、地域生活移行・継続の実現に貢献する薬剤師像が示唆された。

分科会17 褥瘡治療の最前線:求められる薬剤師の専門性

褥瘡は外力が原因となる多病の高齢者における課題であり、その病態生理は非常に複雑である。平均在院日数の短縮に伴い、褥瘡治療は病院完結型から在宅へ移行しつつあり、多職種連携チームの一員として、薬局薬剤師が褥瘡治療に深く関わる必要性が高まっている。

褥瘡治療の大部分を占める外用薬療法において、薬剤師の専門性は極めて重要である。講演では、外用薬の特性(基剤特性)を理解し、その効果を最大限に引き出すための「基剤ファーストの視点」や、創を安静に保ち薬剤の滞留を維持するための「創固定」の重要性などが提唱された(フルタ・メソッド)。 これまでの「薬剤師は傷を見ない」という慣習を打破し、外用薬の選択だけでなく、薬局が担う医療材料の供給も活用しながら、適切な「実技指導」を通じて外用薬のパフォーマンスを引き出すことが求められる。医薬品安定供給の課題がある今、褥瘡の病態と外用薬の特性を理解した薬剤師の積極的な関与は、治療の可能性を広げ、地域医療においてその存在感を大いに発揮することにつながる。


常務理事 本江 誠

分科会3 脳卒中の患者支援に向けた地域でのネットワーク

国内の脳卒中/循環器病対策として地域連携をしていくことが推進されている。全国的には各地域に日本脳卒中ケア従事者連合(SCPA-Japan)が機能している。薬剤師、MSW、看護師などが職種間での情報共有や患者支援を考えるという活動を展開している。このような地域の体制を整えていくことが大切である。

また、脳卒中における薬剤師の役割は適切な薬物療法の継続と質の高い生活支援である。これらを行うためには薬局においては病院からの情報提供が不可欠であるが、どうしても情報共有が不足しがちであった。これらを円滑に行うため、京都府では退院時に服薬管理に注意が必要な自宅療養者でかかりつけ薬局がない方に対して、病院と連携可能な薬局を紹介するという脳卒中かかりつけ薬局制を開始している。これにより急性期、回復期、生活期においても病院薬剤師と薬局薬剤師で連携を持つことができ全ての流用ステージにおいて最適な薬物療法を行うことができるようになっている。このような取り組みはしっかりと見習っていくべきである。

また薬局薬剤師においては在宅医療が進む中で生活期の関わりが深く、再発予防の服薬管理と生活習慣の改善支援が求められる。しかし先にも述べたようになかなか病院と薬局での情報共有は不足しがちである。それを改善するため、ある薬局において、患者が入院したことが分かった時点で、薬局から病院へ連絡をとり入院時に文書による情報提供を行ったところ退院時に何かしら連絡があった病院は6割程度あったとのこと。連携のツールとしてはとても有用なものでこのような方法は推奨すべきかもしれない。

分科会18 実務実習をより魅力的にするために

今回は学術大会内で面白い取り組みを行った。初日に本年度1期と2期に実習に参加した学生が、あるべき実習の姿について語り合うワークショップを行いそのプロダクトが2日目に行われたこの分科会で発表された。学生から出た意見として興味深かったのは、「実習施設での差をなくしてほしい」という要望であった。まさに現在実習委員会で取り組んでいる均てん化の問題である。学生自身がやはりそう思っているということであればこの課題は引き続き解決すべく取り組んでいかなければならないと思った。また求められる実習としては「自分が目指すべき目標となる指導薬剤師に実習を教えてほしい」という意見が出ていた。いわゆるロールモデルとの出会いを求めているということになる。つまり自分自身が学生らにとってロールモデルとなるような行動をしなければならないということであろう。学生の求める理想的な薬剤師になるためには、これも実習委員会で取り組んでいるアドバンストワークショップや意見交換会などで多くの指導者が意見を持ち寄ってどうやったら良い実習になるかを考えていくことが重要と考える。良い実習を行うことがきっと良い指導者になり学生に刺激を与えていくのであろうと思う。


常務理事 立花 義章

「iPS細胞が目指す未来」

10月12日(日)11:00~12:00 京都大学iPS細胞研究所所長の高橋淳先生

iPS細胞で患者さんを治すということをメインテーマとして考えられていることを強く訴えておられた。生物の自己修復能力の進化における変遷について説明し、プラナリアのような原始的な生物が持つ強力な再生能力から、人間の限定的な再生能力までを解説してくださった。結局のところ生物は1つの細胞から始まることに着目して、iPS細胞の研究が始まったことを知った。

また、iPS細胞の3つの主要な特徴を強調していた。

  1. 誰からでも作製可能である点 
  2. 自己の細胞で治療が可能である点 
  3. 培養皿内で生体内の現象を再現できる点 

パーキンソン病の治療に関する臨床試験について詳細な報告がなされ、7名の患者さんへの投与結果が共有された。安全性が確認でき、4名の患者さんで症状の改善が見られたことが報告された。

その中でも、有害事象なし、移植に起因するジスキネジアなし、腫瘍性増殖なしという好結果であったことは将来の実用化に向けての可能性が大きく上がったと思われる。

現在、ボスチニブによる治験を実施しているが、iPS細胞を用いた新薬開発の可能性について説明され、特にALS治療薬の開発事例が紹介された。 ALSに関しても新薬が開発されることが切望されている。

理事 桐野 恵美

地域の医療・保健衛生を司る専門職としての存在感。

すべての薬剤師が、本気で国民・患者の信頼獲得を目指す時機が来ている。

第58回日本薬剤師会学術大会が10月12、13日に京都市で開催され、8,361名(12日正午時点)が参加した。病院薬剤師・学校薬剤師を含むオール薬剤師として、地域の医療の担い手たるプロフェッショナリズムの確立が呼びかけられた。

医療の環境、また薬剤師や薬局を取り巻く状況、患者から求められる役割が大きく変化する中、5年後の次期薬機法改正を見据えた対応が求められており、日薬が政策提言している「地域医薬品提供計画」の導入を目指す考えが、改めて示されている。


この度の薬機法改正では、薬局開設者の責務として「関係行政機関との連携等により」医薬品の安定的な供給や情報提供を図ることが明記された。行政の力も借りながら、薬局間や他職種との連携を通じて「地域を面で支える体制」を構築していくことがこれからの課題であり、そのための道筋を示したのがアクションリストである。そのためには、各薬剤師会・薬局が、日薬が策定・推進している「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」に取り組むことで、どのように提供していくか「実績」を示す必要がある。地域住民からの薬局や薬剤師への期待に応えられるよう、取り組みを「見える化」するのである。自分たちの実態を把握し、今後の地域における課題を抽出して、その対策を立案、実行するほか、その情報を他の医療職種や行政担当者と共有し、地域の薬局や薬剤師会のあり方を示すことが重要となってくる。

さらに、健康増進支援薬局の新設などを盛り込んだ今回の薬機法改正は、地域の課題に即した薬局機能の「強化・見える化」を後押しするものである。我々が思っている以上に、地域の人は薬局・薬剤師のことを知らない。自薬局や地域の薬局機能をリスト化して地域に示して初めて商機も出てくるし、ニーズも見えてくる。トップダウンで、やらされるものではなく、マーケットリサーチの一環として、各薬局の主体的な取り組みを期待したい。人口が減少し外来患者のピークを越えた中で薬局数が増加すれば、薬局1軒当たりの売り上げが下がることは明らかではないか。薬局は小売業であり、売り上げは客単価と客数で決まる。マーケティング(市場調査)や顧客管理の視点を持ち、「どのようなサービスをすれば生き残れるか」という課題に向き合う必要がある。「社会保障」「公衆衛生」「医療」の根本的な定義や考え方に立ち返って考えることが重要ではないだろうか。

また、薬局は「地域の公共的な施設としての役割」が求められる一方、個々の薬局で全ての機能を持つことには限界があり、地域全体で補完し合う体制を構築し、必要な機能を確保していくことが肝要である。「地域」の視点が非常に大事になってくる。薬局が、いかにハブ機能を発揮できるか期待されている。緊急避妊薬のスイッチOTC化を巡って、適正販売のために薬局・薬剤師に求められる多職種・多機関との連携は、健康増進支援薬局(健増薬局)の仕事である。「健康増進支援の機能を多職種・多機関と連携しながら行うという、薬局のハブ機能の具体化」であろう。

薬剤師として、改めて「調剤」の概念、本質を見つめ直し、認識して業務に当たる必要がある。特に薬を渡した後の患者のフォローアップについてである。薬剤師が、専門家としての経験や知識を踏まえた情報を医師や患者に伝え、診断に基づき指示された薬物療法について、専門性を生かして個別最適化して実施する。患者に薬剤交付後も経過観察や結果の確認を行い、薬物療法の評価と問題を把握して、医師や患者にその内容を伝達するという責務を果たさねばならない。AI(人工知能)の技術が進歩する今こそ、経験と知識に基づく薬剤師の判断力と対応力が真価を問われている。

薬局薬剤師には地域における医薬品の供給拠点として、外来や在宅での医療提供機能に加え、OTC等の販売や健康相談など、多様な機能・役割が期待されている。

地域の医療資源たる薬局・薬剤師にとって、今まさに正念場であると同時に、新たな信頼を築く好機でもある。 「薬のことは薬剤師に」と、すべての県民が思える社会の実現を目指し、すべての薬剤師が誇りと使命感をもって行動する時である。


理事 山本 真広

令和7年10月12日(日)13日(月)に第58回日本薬剤師会学術大会(京都)に参加してきました。

〔特別記念講演〕iPS細胞が目指す未来

iPS細胞の特徴

  • 自己複製能:ほぼ無限に増やせる
  • 多能性:様々な細胞になれる

医療応用(アルツハイマー型認知症、ALS等に活用)

  • 再生医療
  • 病態解明

〔特別講演1〕脳とAI、そして未来へ

AIが出来る事

  • 直感
  • 創造
  • 発想
  • 芸術
  • 気が利く
  • 気遣い
  • カウンセリング

AIのチームプレイ:協働作業で味方の勝利に貢献する人工知能
AIの問題点:責任能力

〔特別講演2〕狂言に描かれる医療と笑い

狂言:対話を中心とした台詞劇。(喜劇)大きな特徴は「笑い」。

狂言の医療

  • 『神鳴』:狂言の演目である「神鳴(かみなり)」に出る薬師(くすし)による鍼治療。しかし、そこで遣う鍼は五寸釘のような太い鍼であり、これをでんでん太鼓のような槌で打つ。これは遠くからでも分かるようにデフォルメされたもの。
  • 『煎物』:煎じ薬。薬に使う生薬を陳皮や乾姜などが現れる謡の紹介。
  • 『膏薬煉』:鎌倉と都それぞれの吸い膏薬売りがどちらがより効能の奮った膏薬かを競う。

〔分科会12〕終末期の在宅医療で求められる薬剤師の専門性とは:
ACPと薬局、居宅での患者急変時の対応

W12-3 終末期の在宅医療での急変時対応と看取り~救急認定薬剤師の立場から~

  • 高齢化となり在宅医療が進むので、在宅医療に関わる薬剤師も急変に遭遇し対応する機会が多くなる。
  • 急変時に慌てる事のないよう日常からACPを患者と共有しておき、繰り返し確認し共有する。
  • 急変時には慌てず、患者の希望(ACP)に沿った対応を行う。  ※BLSを行う場合は、躊躇せずしっかりと行う。
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