8月17日(日)に開催されました第1回岡山県学校薬剤師セミナーの報告をさせていただきます。今回は千葉大学大学院薬学研究院の永島一輝先生から「薬剤師がオーバードーズや自殺のゲートキーパーとなるために ―薬局での対応と学校薬剤師による教育まで―」について、岡山県精神保健福祉センター・岡山県自殺対策推進センターの荒木茜先生から「私たちにできること ~ゲートキーパーの具体的な支援について~」の2部構成でご講演をいただきました。
第一部の永島先生からは、過量服薬(オーバードーズ)に関する最近の話題と国内の状況、患者の常用薬と過量服薬の関連性、過量服薬される薬剤やハイリスク薬に関する危険度の客観的な評価、薬剤師や登録販売者におけるゲートキーパーの因子、「オーバードーズ防止のための薬剤データベース」の構築と解析、過量服薬患者の特徴、オーバードーズや自殺が疑われる人を発見したら、学校薬剤師としての新しい薬物乱用防止教育に向けて、などをエビデンスに基づいた内容で講演いただきました。
その中で印象に残っていることをいくつかご紹介させていただきます。
- オーバードーズ患者の特徴として、若い、女性、精神科・心療内科受診歴あり常用薬に向精神薬・抗うつ薬の服用、最近一週間以内の精神的不安事項あり
- オーバードーズは自傷行為であり自殺関連疾患であること
- オーバードーズは違法ではないので薬剤師の介入が重要
- オーバードーズや自殺を疑われる人を発見したら積極的に介入することにより自殺を防止できる可能性が報告されている。傾聴し、その方がおかれている状況を話していただくことが大事
- 若年層のOTC医薬品による中毒の発生防止や適切な使用の推進のために、学校薬剤師による孤独・孤立や薬物乱用防止教育は有用であると考えられる
第二部の荒木先生からは、自殺の現状、事例の紹介、ゲートキーパーとは、と題して実際の事例を通して相談対応時に注意すべきことを教えていただきました。
- 「私(=先生であるあなた)が心配しているということを伝える
- 評価や解決の前に、まずその子の体験や気持ちを十分に共有する
- どんな話も否定せず、寄り添う
- 話してくれたことを労う
- 「話をしない・したくない」ことも否定せず寄り添う
- 沈黙の時間を共有することも大切
- 背景にある不安や問題を探る
- 一方的な指示や相手の話を聞く前に提案しない
- 安易な励ましや責めるようなことは言わない
ゲートキーパーの役割・具体的な支援の方法は、
- 気づき … 家族や仲間の「何かおかしいな」「いつもと違うな」という変化に気づく。
- 声かけ … 「どうしたの、なんだか辛そうだけど、元気なさそうだから心配していたよ」「よかったら話して」
- 傾聴 … 本人の気持ちを尊重し、耳を傾ける。相手の気持ちに寄り添うことが大切。沈黙も共有する。
- つなぎ … 早めに専門家に相談するように促す。可能であれば同行する。
- 見守り … 温かく寄り添いながら、見守る。引き続き相談に乗ることを伝える。
講演をしてくださった二人の先生ともに傾聴が大事だとおっしゃっていたことがとても印象に残り、今後の学校薬剤師や薬局薬剤師の仕事にとても参考になる講演内容だった感じました。
最後に荒木先生から教えていただいたテキストをご紹介させていただきます。
参考
ゲートキーパー要請研修用テキスト(内閣府)
ロールプレイシナリオ:悪い対応・良い対応
https://www.mhlw.go.jp/content/text3_12_184-248.pdf