WEB会報

カテゴリー

vol.278 2025年11月号

若い世代×公衆衛生

委員 柴田 朋子

2025年8月29日、緊急避妊薬「ノルレボ」が年齢制限なしに薬局で購入ができるよう、厚生労働省専門部会で承認された。

緊急避妊薬のスイッチOTC化については、欧米など8か国ではすでに2000年前後より販売が開始され、今では90か国で販売されている。日本では9年前より議論が開始され、途中、時期尚早と見送られながらも、ようやく令和5年11月に厚生労働省からの委託事業として日本薬剤師会が中心となり、緊急避妊薬販売に係るモデル的調査研究が開始された。

研究内容は、各都道府県にて、1モデル(2~3薬局と1産婦人科)を設定し、16歳以上の女性を対象にOTC化する上での様々な課題の抽出を婦人科と連携しながら行うというものであった。

一番の課題として出てきたのが、服用後3~5週間後の避妊成否の確認だった。

購入後に目前服用してもらい、3~5週後に婦人科を受診するか、妊娠検査薬で検査するよう指導するのだが、購入者の85%が避妊成否の確認はしておらず、その理由の約8割が、出血があったためとの事だった。つまり、不正出血の可能性もあり、中絶の機会を失ってしまう恐れを十分に理解できていないという結果であった。そういった中、この緊急避妊薬のOTC化の波は一気に進み、調査開始からわずか2年弱の速さでOTC医薬品として承認された。また、研究当初にあった年齢制限も他国の状況を鑑みて撤廃された。

この研究に至るまでの過程、及び承認を通して感じたことは、いかに多くの女性、特に若い世代の人たちが望まない妊娠の悩みを抱えているかという事である。今後、薬局で取り扱うようになった際には、緊急避妊薬の正しい知識を薬剤師としてしっかり購入者に伝えていかなければならないし、また、中にはSOSを必要としている人がいる事を薬剤師は理解し、必要な関係機関につなげられるよう知識を持っておかなければならないと思う。

まだまだ、日本は、国が性に対する考えの後進国であり、学校での性教育が非常に遅れていると感じる。

性感染症問題においても、梅毒などへの国民の理解は低く、岡山は梅毒感染者ワースト3位に入るほどである。

これからの薬剤師には、若い世代が抱えている、性に関する問題や、オーバードーズなどの社会的問題に対して薬剤師として理解し、公衆衛生の観点から、地域社会に貢献する役割を求められているのではないかと考える。

2025年11月号の一覧へ戻る

印刷準備中です。しばらくお待ちください...

※時間がかかる場合は「キャンセル」して、
「Ctrl」+「P」で印刷してください。