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vol.278 2025年11月号

冬の風物詩と薬の落とし穴

岡山県病院薬剤師会 DI委員会 春木 祐人

朝晩の冷え込みを感じるようになると、スーパーには様々な柑橘類が並び始めます。温かいこたつでみかんを食べるのは、冬のささやかな幸せです。

しかし、この冬の楽しみが、薬の効果に思わぬ影響を与える可能性があります。多くの薬剤師は「グレープフルーツと薬は相互作用がある」ことを知っていますが、実はグレープフルーツだけに限った話ではありません。原因はフラノクマリン類という成分で、柑橘類に広く含まれているからです。

この相互作用が問題となる主な薬は、CYP3A4によって代謝されるもので、ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬、タクロリムス、カルバマゼピン、シクロスポリンなどは、フラノクマリンを含む柑橘類と同時に服用すると、血中濃度が上昇することがよく知られています。以下に、フラノクマリン類を多く含む柑橘類と、そうでない柑橘類をまとめました。

フラノクマリン類は、果汁や果肉より果皮に多く含まれています。また、ジャム、ゼリーにも含まれている可能性があるため注意が必要です。

フラノクマリン類が酵素の働きを阻害する作用は、体内で酵素が新しく作られるまで続くため、摂取した影響はなんと24時間以上続くこともあります。薬を服用している期間は、フラノクマリンを含む食品を常に避ける必要があります。

薬剤師として、どう患者さんに伝えるか

柑橘類は種類が多いため、すべてを把握することは難しいものです。だからこそ、注意が必要な種類と、そうでない種類について、その理由を簡潔に伝えましょう。これにより、患者さんは納得し、より安全に薬を服用できるようになります。薬剤師の専門知識を活かし、患者さんの健康リテラシー向上に貢献していきましょう。

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